日本札幌神殿モロナイ像設置

日本札幌神殿にモロナイ像を設置 (Please click here for the ENGLISH version)

日本札幌神殿にモロナイ像を設置

─神殿完成への希望の象徴として

2015年5月15日,札幌は穏やかな朝を迎えた。午前8時前後,最寄りの地下鉄大谷地駅から神殿に通じる緑豊かな小路を,登校する大学生に混じって札幌の会員たちが集まって来る。

アロン神権回復記念日でもあるこの日,新緑に包まれた札幌の自然はパルマイラを思わせる。気温は12~13度,しかし風が強く体感温度は10度ほどだろうか。「ここ数日は暖かかったのに,今日は寒いですね」と集まって来た会員は言う。

モロナイ像の設置は,工事の一部であってセレモニーではない。しかし,地元の会員たちにとっては神殿完成へ向かう希望の象徴である。それをよくわきまえる現地プロジェクトマネージャーの吉村信之兄弟は,「まったくお知らせしないというわけにもいかないので,地元の神権指導者には(モロナイ像設置のタイミングを)お伝えして,あとはお任せするつもりでした」と話す。ところが直前に教会本部から,敷地内で会員が見学してもよいとの新たな方針が示された。

神殿の敷地に隣接して大学があり,自転車の通行も多い通勤・通学の時間帯でもあったため,道路を塞いで迷惑をかけるわけにはいかない。そこで,1か所のゲートが特別に開けられ,敷地内で神殿を高台から見下ろせる一角に教会員を迎え入れることとなった。

平日の朝にもかかわらず,200人以上の会員たちが集まった。アジア北地域会長会第一顧問の青柳弘一長老ご夫妻,地域七十人の大田原勝幸長老ご夫妻,地域七十人の恩田 豊長老,札幌伝道部の中塚祐文会長ご夫妻をはじめとする神権指導者の姿も見られた。中には,午前3時頃から周辺に待機して朝日の昇る神殿を撮影していた若い会員もいる。夜明けの時点では晴れていたものの,7時頃には全天雲に覆われて肌寒い朝となった。降水確率50%の予報にあって雨は降らず,まずまずの気象条件と思われた。

しかし,工事関係者の間では,モロナイ像の設置方法について直前まで検討が続けられていた。強風のためである。神殿の足場の上に設置された吹き流しは時に真横より上になびき,風速10メートル以上であることを示している。教会員が集まっていることもあり,工事の実施を前提に,安全に吊り上げる方法が話し合われた。風が収まるか,工事開始時間を延期して様子を見ることも提案された。

急遽,予定されていたクレーンの旋回方向を逆にすることとなる。風下に当たる神殿の北面からモロナイ像を吊り上げれば,神殿本体にさえぎられて像に当たる風は弱まるとの読みであった。

モロナイ像を吊り上げる60トンクレーンの操作をしたのは,現場作業員で唯一の教会員,太田雅幸兄弟である。

午前8時50分頃,クレーンは動き始め,木箱のコンテナに納められていたモロナイ像がゆっくりと立ち上がる。「ほら上がった上がった」「すごい……」見守る会員たちから声が上がる。像の基部からは直径10センチの鉄パイプが伸びており,パイプの先には作業員が像を確保するためのロープがつけられている。それを尖塔の上へ正確に吊り下ろさなくてはならない。

クレーンは左旋回し,垂直に吊られたモロナイ像は神殿の北面へ運ばれた。ゆっくりと上昇していく像のラッパが風にあおられて回転する。ひととき太陽が顔を出し,モロナイ像の全身が金色に輝く。

太田兄弟は風の様子を見ながら慎重に像を近づける。尖塔の根元近くで待ち構えた高所作業員が,足場から大きく身を乗り出しいっぱいに手を伸ばして風に翻弄されるロープを確保,像を安定させる。

そのとき一瞬,風が弱まった。

太田兄弟はそれを機に,像を引き上げ尖塔の直上に移動させる。尖塔の頂上で待機する作業員がロープを掴む。再び風が強まった。鉄パイプはたぐり寄せられ,尖塔の先端に収まり,モロナイの体は真東に向けて固定された。

モロナイ像の設置が終わると風はますます強くなった。尖塔周りの足場は次々と解体されていく。足場を覆うネット状のシートが大きく風にあおられる。気象台の発表によると,午後1時過ぎには最大風速13.4メートルに達した。この時間の札幌は,北海道内のどこよりも風が強かった。「延期しなくて正解でした」と施工に当たる竹中工務店の現場所長さんは語る。

工事を見守っていた会員たちも口々に言う。「モロナイ像が設置されて初めて,神殿(が建つという)現実感が増して,鳥肌が立ちました。」(大田原稚賀子姉妹,厚別ワード)

「これからこの地にたくさん主の御霊が注がれるんだなという実感が非常に湧きました。」(札幌伝道部,中塚会長)

「皆さん,信仰の家族というか,その喜びの姿を見て感動しました。」(厚別ワード,大塚真由美姉妹)

モロナイ像の設置は無事に終わった。会員たちは歴史的な一瞬に立ち会えて,満ち足りた笑顔を交わしながら,三々五々,帰途に就いた。

「工事全体から見ると,まだ6合目くらいです」と吉村兄弟は言う。日本札幌神殿の完成まで,現場ではまだまだ気の抜けない日々が続く。◆