リアホナ2005年1月号 財界人対象の「仕事と生活の調和」シンポジウムを教会の後援で開催

財界人対象の「仕事と生活の調和」シンポジウムを教会の後援で開催

「仕事と生活の調和」をテーマとしたシンポジウムが11月19日(金)に東京・新宿の京王プラザホテルで開催された。各企業とともに教会が後援となり,3名のパネリストを迎えて本年度2回目のシンポジウムの開催となった。各企業の人事担当者を始め,会場には約100名の出席者が集い,基調講演やパネルディスカッションに耳を傾けた。

パネリストの一人で,東京スター銀行の頭取であるタッド・バッジ兄弟は,「Work/Life(仕事と生活の)バランスは毎日変化しています。それを判断していく能力も必要です。わたしは朝の8時にはオフィスへ到着し,9時までの時間をプライベートな時間として過ごしています。その中で,家族,仕事,社会貢献,プライベートの分野で立てた目標が達成されつつあるか確認をしています。その中でも家族のことを優先させていますが,4つの分野で目標達成のためにその日に何をすべきかを確認しています。毎日考えて,確認していかないと,最初に立てた目標から遠ざかっていってしまうからです。優先させるものを自分で自己管理していかないと,他のものにコントロールされてしまいます」と人生を豊かに過ごす秘訣を披露した。

フォードジャパンの社長である佐藤勝彦氏は,多様性に焦点を置きながら自社の取り組みを次のように紹介した。「今,社会では多様性が求められています。わたしの会社でも多様性を持つことが強く求められ,定期的に確認を受けます。人種,宗教,年齢,性別など,様々な多様性に富んだグループが社内には存在し,活発に活動を行っています。以前,エイズを患った人が入社試験を受けたときに,エイズであるからこそ,入社させてみようではないかという判断をしました。その人が入社するにあたって関係するであろうと思われる同僚,上司など多くの人にエイズについての講義を受けてもらいました。専門家の先生を招いての講習に出席した参加者は非常に感激しました。エイズに対する認識が随分と変わったのです。自分たちが何も知らなかったということに気づきました。多様性を進んで求めることで,大きな変化が生まれてきます。わたしたちは「Work/Life」というものを別々の考えではなく,「Worklife」という一つの単語にする試みをしています。本来,仕事と人生は別々に考えて調整していくのではなく,すべて生きていくうえでまとまったものだと理解するようにしています。」

法政大学・大学院教授の諏訪康雄氏は,日本の社会では仕事と余暇のバランスを保たせること自体が難しい環境にあると指摘した。「Work/Life バランスはまさに自己管理といえます。それは自分だけがコントロールすることができます。また,Work/Life バランスを推進する中で気をつけなければならないことは,他人がそれを乱さないということです。自己管理すると自然と責任は重くなっていきます。周囲の人たちはそれに対して非難するのではなく,多様性を尊重する姿勢も持つべきです。Work/Life バランスは文化革命と言えるかもしれません。中心となっている核の部分を残し,あとは切り捨てていく勇気も必要です。」

コーディネーターを務めた立正大学助教授の宮城まり子氏は「現在は80~90歳まで生きる時代になってきました。選択が連続する人生の中で,いかに心豊かに生きていくかが大切です。つまり,幸せの価値をどこに置くかが問題になってきます。1.Work(仕事とボランティア),2.Play(人生の楽しみ),3.Learning(生涯学び続けること),4.Love(家族や人とのつながり)はわたしたちの人生で欠かせない要素になるでしょう」と最後の4点を強調してシンポジウムを締めくくった。東京主要都市広報評議会では,来年度も「Work/Life バランス」をテーマとしたシンポジウムを定期的に開催していく予定である。◆