リアホナ 2005年6月号 教会の持つリソースを地域のために──新人ママを支援する

教会の持つリソースを地域のために──新人ママを支援する

「子育てひろば」毎週火曜日の午前中,閑静な住宅街の中にある静岡県浜松市の教会堂には小さな子どもを連れたお母さんたちが集まってくる。入り口には「子育て広場」と掲示され,鮮やかな赤色の揃いのエプロンを着けたボランティアスタッフが出迎えてくれる。

受付を済ませて教会の1階の多目的室に入ると,穏やかな気持ちを感じさせる音楽が流れる中,広い部屋に広げられたおもちゃで遊ぶ子供たちとゆったり触れ合うお母さん方がいる。部屋の端には窓口があり,無料の「医療・子育て相談」コーナーが設けられている。

ここは,浜松第1ワードの有志の会員たちが運営する地域の子育て支援のためのスペースである。対象となるのは乳児から3歳までの子供とそのお母さん。今年1月初めから試験的に開設し,保険など様々な条件を整えて4月から正式にスタートした。このボランティアグループ「フレンド」の“園長”として責任者を務めるのは丹羽敦監督。運営スタッフとして働くのは子育て経験豊富なワードの有志の姉妹たちである。「子育て相談」コーナーに白衣で座っている竹内あや子姉妹は漢方医と薬剤師の資格を持っている。

「普段,家庭の中で家事で忙しいお母さんには,ゆったり親子で触れ合う時間が必要なんです」と,スタッフの井原直江姉妹は話す。「生後2歳から3歳くらいまでは情緒的にも大切な時期です。ここは週1回,10時から12時の2時間だけですけど,その間だけでもリラックスして,豊かな気持ちで子供さんとスキンシップを図っていただければと思います。」子供の虐待などが世を騒がす昨今,社会的な要請を受けてそれぞれの自治体でも子育て支援に乗り出している。核家族が主流で近隣との付き合いもない閉じられた家庭が増える中,ストレスもたまりがちな母親にはそれを開放する場が求められているのである。この「子育て広場」も,そうしたお母さん方の助けになり,教会が地域社会のために奉仕できれば,との願いから開設された。

「ここは『広場』なので,わたしたちは,安全に過ごせるように見守るほかはできるだけ手出ししないようにしています」と,スタッフの石井泰子姉妹は説明する。毎週来る人もあればときどき来る人もあっていい。開設して間もないこともありまだ教会員の親子が中心だが,時折教会員でない方も来られる。井戸端会議のようにお母さん方の間で話が弾み,自然と育児についての情報交換の場ともなる。

一方,「出すぎない」ことを旨とするスタッフだが,舞台裏で,安心してリラックスしてもらうための保安対策には気を遣っている。カーペット敷きの多目的ホールには赤ちゃんが触れて危険なものは置いていないし,エプロンを着けたスタッフが常に見守っている。公園で子供を遊ばせるときのような,車道に飛び出したり転んでけがをしたりといった心配からお母さんは解放される。入り口は,午前10時から11時までスタッフの一人が常駐する。11時からはそれも閉めて施錠し,幼児が外へ出たり外部から不審者が侵入したりできないようにしている。教会を地域に「解放する」と同時に上手に「閉じる」ことが安心のためには必要なのである。また,来場したお母さん方には受付で,事故が起きないよう注意すること,子供を置いてその場を離れるときにはスタッフに声をかけることなど,6項目のルールを記した同意書に署名してもらう。その上で保険もかけ,慎重の上にも慎重を期して運営している。

開設に当たり様々な子育てサークルの運営を参考にしたが,「基本はプライマリーの託児です」と,日曜日には託児クラスの教師を務める井原姉妹はいささかの誇りを込めて言う。ただし,託児クラスのように親子が分かれるのでなく,ほっとする親子のつながりの時間ができれば,と言い添えるのだった。◆