リアホナ2005年10月号News Box 世界最高峰の音楽院に学ぶ5人きょうだいの末日聖徒

News Box 世界最高峰の音楽院に学ぶ5人きょうだいの末日聖徒

──「The 5 Browns」来日,ファイヤサイドが開かれる

5人の天才ピアニストの両親になるというのはどんな気持ちのするものだろうか。ユタ州在住のリサ・ブラウン姉妹はよくこう尋ねられる。「5人のお子さん全員をジュリアードに入学させるなんて,どうしたらできるのですか?」

ニューヨークにある5年制のジュリアード音楽院は音楽教育の名門として知られ,入学するだけでも大きな難関をくぐり抜けなければならない。そこにブラウン家の子供たち全員,長女のディザレー,二女のデオンドラ,長男のグレゴリー,三女のメロディー,二男のライアンが入学を果たしたことは大きな話題となった。在学中に,伝統ある名門クラッシック・レーベルのプロデューサーに見いだされ,5台のピアノで,きょうだいならではの息の合った演奏をする個性的なクインテットとしてデビューすることになる。2005年2月にリリースされたデビューアルバムは高く評価され,音楽専門誌ビルボードのクラッシック・チャートで10週連続1位を記録した。

この6月,ヒンクレー大管長の95歳の誕生日を祝う集いでも演奏を披露したThe 5 Browns。現在,彼らは世界中を回ってプロモーションや演奏活動を続けており,来日の2週間前にはドイツを訪問していた。彼らのたっての希望により訪問先の国々では,テレビ出演などの忙しい日程を縫って教会におけるファイヤサイドを開いている。去る10月30日(日),日本に到着したばかりの彼らは時差ぼけと戦いながらも,日本時間夕方6時(ユタ時間午前2時)からのファイヤサイドに臨んだ。会場の武蔵野ステークセンター(東京・吉祥寺)は,814人の教会内外の人々で礼拝堂からホールまで満杯となった。

さて,先程の質問だが,自身も歌手であり,5人の子供たちに3歳から音楽を教えてきた母親のリサ姉妹はこう答える。「意図してこうなったのではありません。もし計画していたのであれば,例えば管弦楽を演奏できるよう,5人にそれぞれ別の楽器を学ばせていたことでしょう。家に5台のピアノを置くことになるなんて考えたこともありませんでした。」父親のキース・ブラウン兄弟も口をそろえる。「わずか2年前でさえ,(5人そろって世界デビューするという)こんな日の来ることは夢想だにしていませんでした。」

それでは子供たちは特別な才能に恵まれていたのだろうか。リサ姉妹は違う,と話す。「世の中で才能と呼ばれているものの9割は,天才,すなわち初めからあったというものではありません。これができたのは,子供たちが忍耐強く継続して行ったからです。もし継続して信仰をもって行うならば,それがピアノであれ何であれ達成できるのです。」

もし子供たちがピアノをやめたいと言ったら?「ヒーバー・C・キンボール曰く,『いつまでもすねをかじることはできない,自分自身で力を見いだすために達成していかなければならない』──子供たちが10代のときに自分でピアノを弾きたいかどうか考え,自分たち一人一人が音楽を愛するようにならなければなりません。壁に当たったこともありますけれど,彼らはピアノを嫌がることはなく,長い練習も厭いといませんでした。」

主を愛するよう子供たちに教えることはまさにそれと同じだった。「わたしたちも親としてできる限りのことをする必要があります。正しい原則を教え,その後,子供たちは自分を治めなければなりません。」

長男のグレゴリー兄弟はこう話す。「ユタで育ったとき,わたしたちはとても仲が良く,家族は霊的に強かった── 毎朝起きて一緒に聖文を読み,『家庭の朝べ』をしていました。光にあふれていた家庭を離れてニューヨークへ行ったとき,それは真っ暗闇になりました。この大都会では(道徳的に)何もかもが許されているのです。その混乱の中で,今までいかに自分が両親の霊的な力に頼っていたかということに気づきました。きょうだいも一緒にジュリアードにいましたけれど,彼らの光も消えてしまっていたのです。それは盲人が盲人を導くようなものでした。ピアノを弾く度に,自分の証が必要だと痛感しました。」親に促されるからではなく,自分がピアノを弾きたいから弾くのと同様に,両親の信仰に従って借り物の光で歩むのではなく,自分自身の信仰を確立することを,ニューヨークのジュリアード音楽院在学中にきょうだいそれぞれが迫られることとなった。グレゴリー兄弟はこう振り返る。「6か月,聖文を学んで,自分が教えられてきたことがすべて真実だと分かりました。光がまた点いて,自分が何者か,何をなすべきかが分かりました。それは自分が思い描いていた人生とは違いましたけれど,非常に目を見張るような経験でした。」

父親のキース兄弟は,主は時に,思いもかけないものをわたしたちの人生に備えてくださっている,と証する。「わたしたちは自分の生活を自分で計画しようとするあまり,主の備えてくださるものを抑えてしまう危険もあります。もう少し柔軟に構える必要があります。」

二女のデオンドラ姉妹もこう語る。「ニューヨークではとても混乱する毎日でした。弟が言うように試しに遭い,信仰がゆらいでしまったのです。わたしが主を信頼せず自分自身を信じていたときは暗闇にいたのです。そのときは楽しくもなく幸せでもありませんでした。そのような暗黒の中で,祈りを通して主に近づかなければなりませんでした。祈りによって主の方を向けば向くほど信仰が強くなりました。」

母親のリサ姉妹は,継続することの大切さを語るファイヤサイドでの話をこう締めくくった。「子供たちは神様をほんとうに愛しています。わたしたちは毎週,それを確認し,聖約を守ると決意します。それが聖餐会の意味です。……人生の中で正しい決断をして天父と近い関係を持つことを,わたしたち一人一人が決意しなければなりません。良きクリスチャン,良き末日聖徒となるように。それを忍耐強く継続してあきらめない,と聖餐式で聖約するのです。」

ピアノと同様,あきらめずに続けることが人生で大きな達成を生むことを,ブラウン家族は身をもって証しているのである。◆