リアホナ2005年1月号 ハーバード大学のクラーク学部長,民主党の国会議員と懇談

ハーバード大学のクラーク学部長,民主党の国会議員と懇談

ハーバード大学ビジネススクール学部長にして帰還宣教師でもあるキム・B・クラーク兄弟が来日し,12月10日,民主党本部での議員を対象とした朝食懇談会に講師として出席した。クラーク兄弟はハーバード大学で経済学を専攻し,学士号(1974年),修士号(1977年),博士号(1978年)を取得し,1978年からハーバード・ビジネス・スクールで教鞭を執っている。現在の研究テーマは,設計におけるモジュラリティー(基準寸法方式)の概念,テクノロジーの統合,産業発展における競争であり,特にコンピューター産業に焦点を当てている。妻のスー姉妹とマサチューセッツ州ベルモントに在住し7人の子供と6人の孫を持つクラーク兄弟は「成功するリーダーとしての資質/仕事と人生での成功への法則」と題して,午前8時から約25人の議員に講演を行った。大がかりな講演会という形を取らず各議員との懇談を望んだクラーク兄弟の希望を受け,朝食を取りながらの和やかな雰囲気で懇談会は進行された。

クラーク兄弟は冒頭で,誠実性について議員に問いかけた。「政治家に求められる誠実性とは,正直であるだけではなく,有言実行です。表明している価値観と本人の行動が一致しているかが問われます。人との関係こそ大切と言葉で言いながら,子供や妻に不誠実であるならば,どうしてあなた方にスタッフがついてくると思いますか。周囲の方々に不快な思いをさせるような対応をしていませんか。政治家や社会的リーダーとしての誠実性は,その人物がどのように家族に接しているかで判断することができます。家族に不誠実な態度を執っているリーダーがどんなにすばらしいことを提唱しても,それを信じることはできません。」

また,クラーク兄弟は宣教師として2年間の伝道活動に従事した経験や,教会が教える家族の大切さを紹介し,「誠実な人物としての最高の模範」として自分の伝道部長の話を紹介した。伝道部長と一緒に仕事をすることで誠実性というものがどういうことなのかを学んだとの話は,青年時代の実体験として説得力にあふれるものであった。「宣教師」という言葉が繰り返されるたびに,クラーク兄弟の形成された人格と宣教師としての経験が密接な関係にあることが理解された。クラーク兄弟は「人生の中では仕事だけに偏ることなく,家族との時間を持つことこそがほんとうの幸福につながる」ことを強調する。出席した議員のほとんどは多忙な生活を送っていることから,後に議員の間から,家族との時間が十分に持たれていないことを反省するコメントも飛び出した。

「皆さんはこのような話をすると不思議に思われるかもしれませんが,これはわたしがハーバード大学から卒業する900人もの学生に語っているメッセージです。世界で最高と言われているビジネススクールの卒業式で,リーダーとなる人々にわたしが語っている言葉です。いかなる成功も家庭の失敗を償うことはできません。皆さんの最も大切な仕事は家庭の中にあります」とクラーク兄弟は力強く述べた。

議員の中からは「ハーバード大学での最後の授業を受けているような気持ちになりました」という感想も述べられた。講演後にはクラーク兄弟とワーカー長老を囲んでの懇談や記念撮影も続き,議員の多くは「仕事と家庭の調和は難しいと言われることがあるが,教えていただいたことを政策面でも実践していきたい」とクラーク兄弟に今後の抱負と感謝の気持ちを伝えていた。◆