リアホナ2015年3月号 福音のキーワード─【Administer/Minister】管理者と牧者

福音のキーワード─【Administer/Minister】管理者と牧者         

―デレック・リン・ウェスマン

英語が母国語の人が聞くと,ミニスターというのは「霊的に養う」とか「教える」という霊的,宗教的なニュアンスがあります。名詞のMinister は「牧師」,カトリックなら「総長」です。元々は「宗教的な儀式を行う」という意味があり,もう一つ「食べ物や飲み物を人に給仕する」,Serve: 誰かに「仕える」という意味もついているんです。(王に仕える「大臣」がMinister で,第一の大臣はPrime Minister「首相」となります。)

アドミニスターのad(ラテン語の接頭辞)というのはto(〜に対して方向性を持つ)という意味で,元々はminister にad を付けて「人にミニスターする」ような意味だったんです。けれど最近の使い方はさすがに分かれてきて,「委託を受けて責任をもって管理する」と,もう少し支配的なニュアンスなんですね。不動産や財産を対象にすると,自分のものではないけれども任されたものを守る,管理する,維持する,という意味になります。もう一つ,近い言葉でAdministration というのがあるんです。今の政権のことをアドミニストレーションというんですよ。Obama Administration はオバマ政権のことです。時の政府とか,与党とか,そのときの運営を任されている人間の組織を言います。

グループを仕切る / 個人に仕える

動詞として聞くときは,正反対の意味になる場合もあるんです。アドミニスターというのは,指導者として,グループに対して「命令する」「人を仕切る」なんです。行政とか政府が行うことは圧倒的にアドミニストリングが多いですね。大きなグループ,人の集団を仕切るわけですから。日本人は一般に組織力がすごい。団結して何かを成し遂げるのがものすごくうまいですね。

対してミニスターは「人に仕える」「個人的にその人を助けようとする」。イエス様が迷子の羊を捜しに行くというのがイメージ的にぴったりなんですね。ですから教会の指導者の場合は,ミニストリングの方がイエス様から託された本当の使命,みたいな雰囲気がありますね。

もう一つの観点として,ミニストリングは下から,アドミニストリングは上から,というのもあるんじゃないですか。イエス様が弟子たちの足を洗いますよね,あれは印象の強い象徴だと思います。皆さんを指導しているけれど同時に仕えていますよ,という。

近年,教会が強調しているワード評議会のやり方は,個人と家族をどう強めるかに力を入れています。これは間違いなく,アドミニスターからミニスターに移りましょうという意味ですね。大きなグループを仕切ることではなくて個人個人を助けることが焦点になります。

もちろん,( 100 人200 人の大きなワードや,ステークの指導者など)アドミニスターからは逃れられないんです。それをいかに効率的にやって,ミニスターに力が回るようにするか,それがポイントです。

多分どこのユニットでもそうですけど,真珠と箱のたとえで言えば, 箱の方がやりやすい。形としてワード評議会をやって,その月のいろんな予定を話し合って終わりというのは,やりやすすぎて,過剰にアドミニストリングする傾向はあり得ます。けれども,特定のあの人に対してどのように助けようか,というのはもっと考えないといけない。そちらは苦労するから,アドミニスターに流れやすいんです。

「一人一人」がキーワード

ミニストリングは一人一人,一家族一家族にするものです。一人一人というのをルールにしてもいいかもしれない。例外はないです。通訳として同行していて感じますけど,中央幹部の兄弟たちは1,500万人の教会を指導しているのに,接する一人一人に関心を抱くんです。また集会で話をしても,皆さんが御霊を感じられればミニストリングになる。なぜなら,聖霊が一人一人の心に,その人に合ったメッセージを伝えるからです。総大会で中央幹部が(1,500 万人に)霊的な優れたメッセージを伝えたときも,聖霊が個人的に来るから効果があるんです。なぜ神会の中に聖霊がおられるのか,それは一人一人にミニストリングするためです。人間の力だけでは1対1 または1 家族の単位じゃないと無理ですね。

世の国家レベルでも,アドミニスターする政府と政府とでぶつかるじゃないですか。でも各国の個人的な友達を思い浮かべると,ものすごく絆を感じます。集団と集団のいがみ合いで戦争にもなり得るし,ミニスターする一人と一人のつながりで平和にもなり得るんです。(談)◆