リアホナ2015年4月号 幕を越えて次の世へと続く主の業

幕を越えて次の世へと続く主の業

─十二使徒のバラード長老,七十人会長会のラズバンド長老,スティーブンソン管理ビショップを迎えてのディボーショナル

2月20日と22日,十二使徒定員会のM・ラッセル・バラード長老,七十人会長会のロナルド・A・ラズバンド長老,ゲーリー・E・スティーブンソン管理ビショップの一行は名古屋と東京で一般会員向けのディボーショナルを行いました。日本に住む聖徒へ向けた預言者のメッセージを抜粋してお伝えします。(編集室)

ラズバンド長老─

兄弟姉妹,おじやおばとして

ラズバンド長老はまず,エペソ人への手紙2章19節−20節(右)に触れ,その背景を説明する。「これらの聖句は使徒パウロがエペソという町(今はトルコという国になっています)で話したことです。そこにはギリシャ人,ローマ人,アラビア人,その他ユダヤ人も含めていろいろな人々が集まっていて,皆が新しいキリストの教会に加わっていました。違う生い立ち,違う言語,違う伝統を持つ人々でした。このパウロのメッセージは,今日集まっているわたしたちにも当てはまります。どこから集まり,どの言語を話し,肌の色がどうであれ,この教会ではわたしたちは異国人ではなく,同じ国籍を持った同国人,兄弟姉妹なのです。

また古代と同様に,現在のわたしたちの教会も使徒や預言者という土台の上に建てられています。イエス・キリストがこの教会の頭です。わたしたちは主の教会の中で家族になっているのです。」

サモアを訪問したとき,ラズバンド長老は聴衆に「わたしたちは兄弟姉妹です」と語りかけた。集会が終わって壇上から降りたとき,白髪でハンサムなサモア人の男性がやって来て握手をした。

「あなたはわたしの兄弟ですか?」「はい,友よ,わたしは兄弟です。」

すると男性は振り返り,彼の子供たちを紹介して言った。「するとあなたはこの子たちのおじさんですね。」ラズバンド長老は認めた。「そうですね,あなたの子供たちはわたしの甥っ子姪っ子になりますね。」

「わたしたちの互いが持つ関係について,この貴重な経験から学びました」とラズバンド長老は続ける。「生ける預言者,使徒がいる主の教会において,わたしたちはキリストの家族であり,まさに兄弟姉妹です。

わたしたちが子育てをしているこの世は厳しい世の中です。古代の預言者と使徒たちは今日の子育ての難しさを預言しています。使徒パウロは末日に,大変な危険な時代が来ると預言しました。ニーファイも,末日にはサタンが,人々の心の中で暴れると言っています。回復の時代の初期に主は,預言者ジョセフ・スミスに,人の子らの中にある大変で危険な状態を把握していると語られました。ボイド・K・パッカー長老も,わたしたちは敵の領域の中で子供を育てていると言っています。

太平洋の島々では全ての大人をおじさん,おばさんと呼んでいます。ですからわたしたちはお互いにおじさん,おばさんと呼べる関係になり,互いのことを気にかけるべきではないでしょうか。

教会員がどのような人々なのか理解するために今日,来ている(求道者の)皆さん,これがイエス・キリストの回復された真実の教会です。わたしたちはもはや異国人,知らない人々同士ではありません。主を愛し,互いを愛しています。そして皆さんを愛しています。」

ラズバンド長老は,使徒がイエス・キリストの僕であることを証し,生ける使徒の言葉によく耳を傾けるように勧めて締めくくった。

スティーブンソンビショップ─

回復の証

スティーブンソンビショップは,教会が組織される1年前,1829年4月6日に起こった出来事を思い起こさせた。22歳の教師であったオリバー・カウドリは,パルマイラからハーモニーに行くべきだと感じる。それは東京−名古屋間くらいの距離であった。到着するとオリバーは,23歳のジョセフと24歳のエマの家に行き,こう告げる。「あなたが金の版を持っていると聞いたので,翻訳を手伝いたいと思って来ました。」─それから90日後,ジョセフはモルモン書の翻訳を完了する。「それは本当に奇跡でした。その90日間には回復の重要な出来事が幾つも起こりました。」バプテスマのヨハネがバプテスマの儀式を施し,アロン神権を回復した。ペテロ,ヤコブ,ヨハネがメルキゼデク神権を回復した。3人の証人と8人の証人が金版を見,手で触れた。「福音の大切な教義や教えはこの回復を通して明らかになりました。回復についての物的な証拠はモルモン書です。だからこそモル__モン書はわたしたちの宗教のかなめ石と呼ばれています。人はモルモン書について証を得るとき,回復についても証を得ます。」

スティーブンソンビショップは,名古屋伝道部会長を務めた3年間とアジア北地域会長を務めた4年間にわたり,『わたしの福音を宣べ伝えなさい』のテキストを使い込んだ。5章「モルモン書の役割は何でしょうか」の項の至るところにメモが書き込まれている。その多くは宣教師たちから聞いたコメントであった。いわく……

「試されているのはモルモン書ではなくその読者なのです。わたしたちが知るべき事柄は全部モルモン書に書いてある」「モルモン書は証と幸せを得るためのかなめ石だ。聖書とモルモン書は全ての人にキリストのもとへ来るよう招いている」「わたしたちにはモルモン書がある。そこにある教えに従うなら恐れることは何もない。神様に話したいとき,そして神様の声を聞きたいときは読みなさい。」「もしモルモン書にどのようなことが書かれているのかを人々に伝えるなら,彼らは証を得るでしょう」

スティーブンソンビショップは問いかける。「皆さんはなぜそれほどモルモン書が力強いものなのか理解できていますか?」そして自身が若い宣教師だったとき,任地の熊本で証を得た経験を語った。

日本に着任したばかりのスティーブンソン長老は,モルモン書を読みながら,それが真実であるという確信が得られるよう祈っていた。あるとき同僚と戸別訪問をしていると,一人の老婦人が玄関に入るよう優しく招いた。「わたしはモルモン書と回復のメッセージについておばあさんに話しました。日本語が上手に話せなかったので,わたしの話をよく理解できなかったと思います。けれどもおばあさんに自分の証を宣べたとき,モルモン書は神の言葉であるというとても強い気持ち,心の中に燃える思いを感じました。その気持ちは非常に強く,目に涙があふれてきました。

わたしはそのとき感じた気持ちをいつも思い出します。モルモン書を読む全ての人に主が与えてくださった約束(モロナイ書10:4)に感謝しています。その約束は真実です。わたしはモルモン書が神様の御言葉であると知っています。その記録は天使からもたらされ,ジョセフ・スミスによって翻訳されたことを証いたします。」

バラード長老─

回復された貴重な知識

バラード長老は,スティーブンソンビショップの証を受け,福音の回復について語る。「皆さんはこの世の歴史,旧約聖書,新約聖書を読むときに,この福音が世に出現して何回も取り去られるという繰り返しがあることが分かります。この教会は,古代の預言者のように,この福音の全てを回復するように召しを受けた預言者ジョセフ・スミスを通して回復されました。主は,これが最後の神権時代,時満ちる神権時代であるとおっしゃっています。」

回復によって得られた知識は非常に貴重なものだとバラード長老は説く。バラード長老が最近フランスを訪問したとき,パリの空港で新任の宣教師たちと出会った。宣教師として成功するための助言を求める彼らにバラード長老は,「市場に行って数人に話しかけ,神様とは誰かと問いかけて,パリの人たちは神様をどう思っているのか書き留めてみなさい」と提案した。宣教師たちはそれを実行し,結果を手紙でバラード長老に知らせてくれた。

「神とは花とか太陽とか月の中にある,といった漠然とした答えもありました。多くの人はニカイア公会議(325年)で決められた信条に基づいて,神とイエスと聖霊は一体であって独立したものではない,と説明しました。誰も,神様はわたしたちの天の御父であり,わたしたちは神様の息子娘であるという概念を持っていませんでした。しかしこの教会の小さな子供たちを集めて『神様とは誰?』と尋ねるなら,きっと歌いだすでしょう,『神の子です』と。

わたしたちは天の御父と御子イエス・キリスト,聖霊とは誰なのか知っています。何とすばらしい賜物でしょうか。それをいつも見過ごさないようにしましょう。」「イエス・キリストの福音があって本当にすばらしいですね。わたしたちは自分が何者かを知っています。神の子供たちです。この命は永遠のものです。また現世は永遠の進歩の中の一つの時期にすぎません。それを知っていると,生活のさまざまな困難にどのように対処するかが大きく変わります。兄弟姉妹の皆さん,わたしたちは神様とは誰か,主イエス・キリストとは誰か,そして聖霊とは誰なのかを知って本当にたくさんの祝福を受けています。わたしたちはときどきこの生活の中で,特に回復されたすばらしい知識について知っているにもかかわらず,のんびりしてあまりそれを大事にしないことがあるかと思います。」

「神様は全ての子供たちに,自分で行動を選ぶ自由と能力をお与えになっています。皆さんはイエス・キリストの福音に従って努力して生活することも,福音を無視することも選べます。これは皆さんに与えられている自由です。天のお父様はそれがわたしたちの人生に必要不可欠だと御存じでした。自由意志を持つことによって神様のようになる方法を学べるようになりました。」

死と復活

「わたしたち一人一人が神様の子供です。皆さんの肉体の中に霊があります。わたしたち一人一人の肉体のどの部分よりも,その中に存在する霊の方が重要です。残念ながらわたしたちは物質的な肉体のことを気にして時を費やし,霊的な事柄を心配するのに十分な時間をかけていません。

ここにいるほとんどの人は愛する人を亡くして別れを告げた経験があることでしょう。人が死ぬとき何が起こるのでしょうか。肉体の中の霊が亡くなった人のいる霊界へと進んで行きます。皆さんが亡くなっても,手もあります,目もあります,耳もあります。皆さんは現実の存在です。この世を後にして次の世に進んだことさえあまり実感できません。しかし,いつも肉体を使ってしていたことができなくなっているのに気づいて,死んだことを悟ります。わたしの判断では,そのときに全ての膝が屈み,全ての舌が,イエスはキリストであると告白するようになります。なぜでしょうか。それは,全ての人がイエス・キリストを通して,死んだ状態から復活すると約束されているからです。

わたしたち全員にはDNAがあります。どのようにしてそれが機能するのか完全には分かりません。しかし皆さんは,iPadや携帯電話やコンピューターでいろいろなことができますね。そういうものですばらしいことができるなら,神様の力によっていかにすばらしいことができるかは想像に難くありません。ですから復活の日が来ると,いわば,復活を司る天のコンピューターがどのような方法によってか働き,皆さんが死んだ状態から復活する時が来ます。肉体と霊が再び合わせられ,皆さんの生涯における最良の輝かしい頃の状態に回復されることになります。全ての人間の魂にあって確かに約束されている復活を経験します。

なぜならイエスはキリストであるからです。イエスは神の御子です。そのみもとに来る全ての人のために罪の贖いをしてくださいました。みもとに来て主の御名を信じ,主の権威と神権の下で水に沈められるバプテスマを受け,按手により聖霊の力を受ける全ての人のためにです。」

自分と面接をする静かな時間

「ですから今晩,兄弟姉妹の皆さんに,それぞれの今の生活がどうなっているのか考えていただきたいと思います。皆さんの生活の中でするべきではないことを今している,そういうことはありませんか?皆さんの中に,例えば,いかなる類のものであれポルノグラフィーに手を染めている方はいませんか?皆さん一人一人にしか答えられません。しかし,そういう何らかの理由によってポルノグラフィーに,または神の戒めを守るのに悩んでいる方がもしおられましたら,イエス・キリストの御名によって,今晩その行いを改めてくださるようお願いします。もし今,皆さんの生活の中で正しくないことがあれば,父の御名によって深く考えて,祈って,深く理解して,立ち直ることができるように決意していただきたいと思います。

全ての人にとって,ときどき静かな時間を設けて,座って,自分に対する面接をするのは有効なことです。わたしはどうだろう,今の状態はどうだろう,よりよくできることはないか,やめるべきことはないか。皆さんの生活に虐待のようなこともないように願っています。皆さんが親切に,思いやりをもって家族に接していることを願っています。もし皆さんが,人にとって祝福となることを十分に行っていないなら,今晩もっと考えて,神様のみもとへ戻ることができるよう,何ができるか考えていただきたいと思います。わたしたちの中にある霊がわたしたちの本当の姿です。すなわちこの世に生まれてくる前に存在していたものがあります。わたしたちが死んでからも続きます。わたしたちが正しく選択の自由を用いて,天のお父様と主の戒めを守るように努力するならば,神様が約束してくださったすばらしい受け継ぎを得ることができます。」

主の目から見て最も大切なこと

専任宣教師に「一番好きな聖句は何ですか」と尋ねられると,バラード長老は,「わたしを愛するならば,わたしの戒めを守るべきである」※1を挙げる。短く簡潔でありながら,全てのことがそこに表現されているからだという。主を愛する方法についてバラード長老は説く。

「皆さんが,この世を去って次の世に移り復活を待っているとき,裁かれるときに,主にとって何が一番大切かを説明したいと思います。主に対して,わたしたちがこの世で行った全てのことを報告する場面を想像してみてください。主はそこで何について一番気になさるでしょうか。おそらくわたしたちがほとんどの時間を使っていることではないと思います。例えばどんな車に乗っていたのか,どんな家に住んでいたのかはあまり気になさらないでしょう。しかし大いに関心がおありになるのは,皆さん一人一人がこの世での働きにおいて,どのような人に触れて,誰に祝福をもたらしたのか,についてです。

どのような人に触れて,誰に祝福をもたらしたのか,

神の御子イエス・キリストの贖いは,この世の歴史の中で与えられた最も重要ですばらしい贈り物です。救い主がゲツセマネの園でされた経験,その働き,皆さんとわたしに対する愛に思いをはせるなら,わたしたちはそれに対してどのようなお礼ができるのか,何が一番の恩返しなのか,どのように主に対してわたしたちの愛と感謝を表現できるのか考えるべきです。

皆さんに提案します。わたしたち個人のそれぞれの働きによって,どのような人々に影響を与え,どのように祝福したのか,この世において主の御心をわたしたちが行ったことについて報告するのが一番の恩返しだと思います。」

どのような人々に影響を与え,どのように祝福したのか主の御心をわたしたちが行ったこと

幕のかなたで続く主の業

アルマ書29章※2には,息子アルマが改心した後,福音を人々に知らせて悔い改めに導くことを熱烈に望むようになった気持ちが記されている。バラード長老は,回復された貴重な福音の知識を持つ者として,アルマの思いに共感を示す。

「皆さんの信仰を試します。これから数週間の間,天の御父に祈り求めていただきたいと思います。誰かがイエス・キリストの福音を聞く準備ができるように,と。皆さんがそのような助けを求めるときに,もう少し友人や隣人,親戚の方に,知っていることを大胆に伝えられるようになってください。たくさんの専任宣教師が教えてくれますから,独りでしなくても大丈夫です。皆さんがそのようにしてくれれば,福音を分かち合うのがとても上手になります。」

バラード長老は教義と聖約138章(左)を引用して言う。「つまり皆さんは,死んでから雲の上に座っていろいろな所へ行き,ハープを弾いてのんびり復活を待っているわけではないのです。皆さんには真理があります。皆さんはイエス・キリストの福音を持っています。神権の祝福を持っています。神の宮の儀式を持っています。皆さんはイエス・キリストの福音の全てを持っています。」

バラード長老は,人が霊界に行くとき,この世で示した愛と親切,分かち合った福音に感謝する人々に取り囲まれ抱かれて歓迎されることを話した。「そこで質問です。皆さんはそのときにどのくらいの人々に迎えられるでしょうか。愛する兄弟姉妹の皆さん,主が皆さんを祝福されますように。皆さんがひざまずいて主の助けを祈り求めることを願っています。人に手を差し伸べること,そしてこのすばらしい回復のメッセージを伝えること。それが今,最も大切なことです。」◆

人に手を差し伸べること回復のメッセージを伝えること

※1─ヨハネによる福音書14:15
※2─アルマ29:1−2,9参照