リアホナ2013年10月 モルモンであることで得られる祝福を青少年に伝えていますか?

モルモンであることで得られる祝福を青少年に伝えていますか?

ブリガム・ヤング大学教育学部,ブラッド・ウィルコックス教授のディボーショナル(2013 年8 月10日,於:武蔵野ステークセンター)

ブラッド・ウィルコックス兄弟はブリガム・ヤング大学(BYU)教育学部教授である。長い実績を持つefyのプログラムをBYU以外の場所でsmycとして開催するための翻案を何年も前から手がけてきた。そして2010年には韓国で初めてsmycが,2011年には日本初のefyが開催される。自ら深くかかわったsmycプログラムの日本での現場を今回初めて訪れることに寄せて,「これから神戸で,また名古屋で若い人たちとわたしの証を分かち合えることをとてもうれしく思います。彼らは同じような信条,信仰を持つ人たちと集まることで強められます。また彼らよりも少し年上のカウンセラーたちは彼らのヒーロー※1となります。そして何よりも大切なことは,彼らが御霊を感じるということです。彼らはこの経験からとても高められた状態で家に帰ります。その一端を担えることをとても感謝しています」と語った。

「わたしたちはキリストの教会の会員としてたくさんの霊的な祝福を頂きます。でも,わたしたちの住む恐ろしい世の中は霊的でない方向にどんどん進んでいきます。若い人たちは宗教の必要性を見いださずに育っていきます。」霊的な祝福について証しても若い人たちは関心がない。「ですから,若い人たちと一緒に働くときには霊的な祝福に目を向けるのではなく,物質的な祝福に目を向けてあげる必要があります。教会の会員であることにおける祝福についてです。」

ウィルコックス兄弟がかつてチリ・サンティアゴ東伝道部会長を務めていたとき,宣教師が,教会から足の遠のいていた一人の姉妹を見いだした。「宣教師たちは再び彼女を教会に招待し,彼女は自分の息子を連れて来ました。息子は教会が好きになりました。セミナリーもモルモン書を読むのも,また若い人たちの活動も好きでした。しばらくするとバプテスマを受けたいと思うようになりました。お母さんはとても喜びます。でもお父さんがだめと言ったのです。」

ウィルコックス会長はこの父親を説得するよう宣教師に頼まれた。父親に会うと,彼の口から出た最初の言葉はこうだった。「ぼくの息子はモルモンになることで何を手に入れられるんだい!」「救いですよ」とウィルコックス会長。「救いなんか口にしないでくれ。どんな教会に行ったって,道路が金で敷き詰められた豪邸が天にあるって言っているんだ。今,ここでのことを話してくれ。ぼくの息子はモルモンになることで何を手に入れられるんだ?」─「『教会の会員となる祝福というのはとても霊的なことなんですよ』とわたしは言いました。『でもお父さんの言われることは分かりますので,霊的なことはひとつ,わきに置いておきましょう。』」ウィルコックス会長は,教会員となることで得られる以下の事実を父親に伝えた。

長寿─「モルモンの人たちは長生きです。調査によると10年から11年長く生きます。……わたしにはどうして長生きするのか分かりません。健康の律法があるからかもしれません。幸せな前向きな態度を執ろうとしているからかもしれません。忙しすぎて死ぬのを忘れているのかもしれません(笑)。でもどのような理由であれ,わたしたちは長生きができるんです。」

より良い教育─「モルモンはよく教育を受けています。これは世界のどこでも同じです。わたしたちの教会の文化は教育に目を向けています。」モルモンの家庭には平均的な家庭よりも多くの書籍や楽器がある。またジョセフ・スミスは教育界で「生涯教育の父」と呼ばれている,とウィルコックス兄弟は紹介する。ジョセフ・スミスの預言者の塾以前に,成人への生涯教育を行ったという歴史上の記録はない。

ウィルコックス兄弟が若い専任宣教師としてチリで奉仕していたとき,アナという女性が改宗した。アナは13人きょうだいで,その全員が文盲だった。しかしアナは,聖文を読みたいと望み,宣教師や会員の協力で読み書きを覚えた。アナは自分の子供たちに読み書きを身に付けさせるのみならず,大学を卒業させるという目標を立てた。それは南米社会にあっては非常に困難なことだった。─2003年,ウィルコックス兄弟は伝道部会長として再びチリに赴任し,年老いたアナと再会した。彼女は相変わらず強くて活発な教会員だった。そして彼女の子供は全員,大学を卒業しており,いちばん上の孫娘は医学校に通っていた。「すべての霊的な事柄をたとえ取り除いたとしても,これがモルモンの教会なのです。」

友情─「わたしたちは国際性豊かな友達のネットワークができます。」ウィルコックス兄弟はかつて,博士号の学位を取得するために一家で別の土地に移った。引っ越し用の大きなバンで新居に着いてほどなく,地元のワードの兄弟たちが手伝いに駆けつけてくれた。─「近所の人がやって来てこう言うんです,『彼らはだれですか?』『知りません。彼らはわたしの教会から来てくれたんです。』……その隣人は,わたしたち家族がその土地に着いてわずか1時間なのに,自分よりも友達がたくさんいることに驚いていたんです。」

チリでの伝道部会長時代,23歳の男性が改宗した。彼はニュージーランドに留学することになっていた。しかし彼は現地に何のつてもない。ウィルコックス会長は,留学先のビショップにチリから電話をかける。「この若い男性は3週間前にバプテスマを受けました。だれか彼を空港に迎えに行ってくれる人が必要です。」ビショップは言う。「全然問題ありません。」「彼は泊まるところもないんです,お金もありません,英語も話せません」とウィルコックス会長。ビショップはまた言う。「全然問題ないです。」─「それはこの教会の中で起きることです。ほかの場所では起きないことです。」

ウィルコックス兄弟は80年代の終わりに来日し,東京神殿に参入した。神殿内で,ユタ州プロボでの伝道に召された若い男性に出会った。「『じゃあアメリカに来たらぼくたちが空港であなたを迎えて,MTCに連れて行ってあげるよ。』そのとおりにしました。伝道の終わりごろ,彼はわたしのステークに転任してきました。わたしの妻が彼を食事に招待しました。─すぐに友達になれるというのはモルモンとしての祝福です。」

確固とした強い家族─教会員の離婚率は一般に較べて非常に低い。神殿結婚をした夫婦の離婚率はさらに低くなる。またある一般の調査によると,95%の青少年が,結婚や家族に希望を見いだすことはできない,と述べている。「世の中の若い人々は『幸せな結婚,幸せな家族を作ることはできない』と思います。でもモルモンは違うんです。非常に難しい家庭の中で育った者であっても彼らの中には希望があります。」その希望がどこから来るか,ウィルコックス兄弟は霊的な側面にはあえて触れず,「ロールモデル」ということについて語る。彼らは教会の中で,あらゆる世代の幸福な家族の姿を見ることができる。そうした姿が若い人に,自分もあんなふうになりたい,という希望を与えるのである。

─父親は,ウィルコックス会長の答えを気に入ったようで,息子のバプテスマを許可するのみならず,バプテスマ会に出席もしてくれた。「息子さんが白い衣装を着て,特別な聖約を交わすときに,お母さんは涙を流していました。わたしはお父さんを見ていました。彼は何かを感じていたんです。御霊が彼の霊に触れてくださったのです。それはとても深く彼を感化しました。」数か月後,その父親はバプテスマを受けた。

「わたしはお父さんにこう言ったんです。『じゃあ,あなたは今,モルモンになって何を得るんだい?』彼は答えます。『……救いですか?』(笑)─すなわち,わたしたちの出発点に帰って来ていました。」

「霊的に,また物質的にたくさんの祝福があるのに若い人たちはどうして福音から離れたいと思うのでしょうか。どうして若い女の子たちはわたしにこう言うのでしょうか。『18歳になるのが待てないわ。18歳になったらお母さんから強制的に教会に連れて行かれないのに。』若い人が教会を離れたいと思うのは,恐らく,彼らが教会で何を手に入れられるかをわたしたちが教えていないからだと思います。わたしたちが受けられる祝福を十分に彼らに語っていないのだと思います。ルールについてはたくさん話をします。でもわたしたちはもっと多くの時間をルールの理由について話してあげる必要があります。教会の標準や戒めについてはたくさん話します。でももっと多くの時間,祝福について話してあげる必要があります。戒めを守ることで得られる祝福についてです。※2わたしたちは時々,海の真ん中の救命ボートにいるかのような気持ちがします。そして,たくさんの青少年は,タイタニック号に戻りたいと思っているのです。わたしは『だめだよ』と言います。『違うんだよ。わたしたちは救命ボートにいるんだから。』『でもタイタニックでは音楽が流れていますよ。』『それは「神よ,汝れに近寄らん」という賛美歌だよ。彼らは死のうとしているので神に近づこうとしているんだよ。』(笑)時々わたしたちは若い人々に教える必要があります。人生は,沈んでいく船よりも救命ボートに乗っていた方がいいのだと。でも救命ボートはとても窮屈です。それに皆が自分のことをよく知りすぎています。救命胴衣はあまり着心地がよくありません。でもわたしはこう言います。『沈んでいく船に乗るよりはいいでしょう?』

わたしたちが若者に,この教会のすばらしさについて証をするとき,物質的な祝福について,また霊的な祝福について,その両方を話すということを覚えておきましょう。彼らが今,ここで得られるもの,また彼らがこれから後に得ることのできるもの。わたしは妻と一緒にイエス・キリストについて証をします。そして主の贖いが現実のものであることを証します。贖いによってわたしたちに,永遠の祝福が用意されています。わたしたちはそれをよく知っています。でも,贖いには今,ここで必要な祝福も用意されているのです。そしてその祝福も現実のものなのです。」◆

※1─右ページ2段目中ごろに言及されている「ロールモデル」を参照

※2─ウィルコックス兄弟の言う,戒めを守る理由を教え,戒めを守ことで得られる祝福を教える

アプローチの実際は,本誌ローカル8−9ページ掲載の,青少年に向けたお話に見ることができる