リアホナ2013年6月号  非常時に備える方法を地域社会に広める

非常時に備える方法を地域社会に広める

太陽光を利用した非常用電源や調理器具を展示─名古屋東ステークにて

愛知県は,東日本大震災以降,東海,南海,東南海地震が心配される地域であり,太平洋沿岸の津波の被害想定もされている。その中にあって,緊急時の備えを地域住民の方々に説いている会員がいる。

ソーラー蓄電システム

名古屋東ステーク瀬戸ワードの篠原峰雄 兄弟は,ソーラーパネルと自動車のバッテリーを使って,非常時の夜でも光(電気)が確保できるソーラー蓄電システムを作り,そのノウハウを町内会,自治会の方々や地元アマチュア無線クラブの仲間たちと分ち合っている。

仕組みはとても簡単で,最近普及してきたソーラーパネルで発電し,放充電コントローラーを仲介して車のバッテリーに充電(蓄電)し,シガレットソケット(直流12Vを取出す場所)を接続して使用するもの。ソーラーパネルは屋根に載せるほどの大きさは必要なく,1枚だけ(基本サイズは83cm×63cmほど)で十分な発電能力が得られる。これを日中,日当たりの良い場所に置いておくだけで充電される仕組み。自動車用のLED電灯を用いると40Wの白熱灯に相当する明るさは十分確保でき,一晩中使えるという。この基本的なソーラー蓄電システムの製作費用は約1万円。カセットガス式の発電機や本格的なガソリン発電機に比べるとはるかに安い。

明かりの確保のみならず,車内で使用できるポータブルテレビや携帯電話の充電器などをつないで,災害情報の取得や安否の連絡にも応用できる。さらに,バッテリーから家庭用電源に変換するDC-ACコンバーター(ホームセンターで3,000円ほどで購入できる)を介することで,ノートパソコンや小型電気製品の使用ができる。

篠原兄弟はこの装置についてこう話す。「太陽光さえあれば電池が切れる心配もなく,夜間も蓄電で使え,燃油・ガスなどの燃料を使わない完全自立型の電源なんです。これは東日本大震災のテレビ番組の中で紹介されていました。でも,その後なかなか広まらないなぁ,って思って,『それなら自分で勉強してみよう』とやってみたら,何とも簡単に出来上がることが分かったんです。すべての部品は市販されていて,特別な回路も必要ありません。インターネットで入手可能です。高校生でも製作できますよ。」地方版の新聞でも採り上げられ,名古屋周辺はもちろん中部圏の県外の方からも問い合わせが寄せられている。

この装置を日々利用している元地域七十人の石井哲志 兄弟はこう話す。「重宝しています。家内の妹も使っていて,皆さんに勧めています。携帯の充電にはまずこれを使います。非常時の電源があるのでいつも安心しています。教会の近所の方々に, 『教会ではこんなことをしています』ともっと伝えていきましょう,とステーク内で話をしているんです。地域に役立つ情報は,教会外の方々にお伝えしたいと思います。教会への理解も深まると思いますよ。」

篠原兄弟も語る。「これを始めたときは,地元の皆さんにお教えしました。最近は,地域のボーイスカウトに教えているんです。」昨年9月1日の防災の日には,近隣の市民の方とともに,瀬戸ワードでこの装置の製作会も開催した。

ソーラークッカー

また,瀬戸ワードの杉本知枝姉妹は,同じ太陽光を別の方法で利用している。「今日は午前中にクッキーを焼いてきたんです」と話す杉本姉妹は,普段からソーラークッカーを利用して食事を用意したり菓子類を作ったりしている。大きさは直径約70cmのパラボラ型で,反射素材でコーティングされた段ボールでできている。光の集まる中心に簡易な五徳があり,その上に鉄板や鍋を置く。季節に関係なく太陽が出ていれば調理できるという。杉本姉妹は,「これくらいの大きさがちょうどいいんです」と言う。「もっと立派で高価なものもありますが,熱量が大きく,火事ややけどなどの事故につながることがあります。食材は,火を通りやすくするために小さく薄く切ります。量が多すぎるのは難しいですね。調理器具は黒いものを使用します。蓋がガラスなら内側が黒ければ温度は上がりますが,できれば外側も全部黒い方が温度は高くなります。お手軽なのは黒いアルミ箔やキャンプで使う飯ごうです。外側は黒く,アルミの厚さが薄いので,熱効率がとても良いのです。午前中に準備をして,昼食と夕食とおやつまで作っています。スープ類は何でも,ケーキ,クッキー,タルトなどもできます。光量が豊富にあれば肉や魚を焼くこともできます。完全に火が通らなかった※1 としても,後からキッチンで短時間で調理を完成できますから光熱費の節約になります。昼をつかさどるために造られた大きな光─太陽は,わたしたちにたくさんの恵みをもたらしてくれます。主の創造の業に感謝します。」

幼稚園のお母さん仲間の中でもこのソーラークッカーの話をよくしているという。「皆けっこう関心があるんですよ。一緒に食糧貯蔵,緊急時の備えや教会のお話などもしているんです。紹介するとすぐ購入してクッキーを作ったりされる方もいて。今までの成功も失敗もすべてブログ※2 に書いています。ソーラークッキングを楽しんでくれる人が一人でも増えたらうれしいです。わたしにとって,ブログは社会への種まきなんです。皆さんが見に来てくださっているので,福音のことも書いています。わたしの知らない方が知らないところで読んでくださって,少しでも伝道につながれば……と思っています。」

去る5月5日,名古屋東ステーク大会が愛知県の瀬戸市文化センターで開かれた。その際,これらのソーラー蓄電システムとソーラークッカーがロビーに展示された。展示ブースではステークの会員たちが次々に感想を口にしていた。「これぐらいの大きさでできるんですね。」「災害時でも温かいものが食べられると,精神的に安定しますよね。」「紙でもこれだけの熱量を集められるというのが驚きです。」「(太陽光で)意外と調理できるんですね。やってみたいです。」◆

※1─「加熱が不十分なまま長時間放置すると食中毒の恐れもあります。十分な加熱(80℃以上)と温度管理に気を付けてください」(杉本姉妹)