リアホナ2013年1月 2013年,青少年の学びが変わる

2013年,青少年の学びが変わる

─青少年のための新教科課程「わたしに従ってきなさい」

この秋の総大会,2012年10月6日,土曜午前の部会で壇上に立ったトーマス・S・モンソン大管長はこう述べた。─「喜ばしい発表ですが,今後直ちに,すべてのふさわしく有能で,高校卒業かそれと同等の資格のある若い男性は,どこに住んでいるかにかかわらず,これまでの19歳に代わって18歳から宣教師としての奉仕の推薦を受けられるようになります。……若い男性が宣教師として奉仕を始めることのできる年齢について,祈りを込めて深く考えていたとき,若い女性が奉仕できる年齢についても考慮しました。そして本日,伝道に出たいと望む,有能でふさわしい若い女性は,これまでの21歳に代わって19歳から宣教師としての奉仕の推薦を受けられることを,ここに喜んで発表いたします。」

若い男性は18歳から,若い女性は19歳から伝道に出られるようになった。これにより,特に日本においては何が変わるのだろうか。

ソルトレーク・シティーでの反応は早かった。モンソン大管長の発表からわずか2週間後,それまで週に平均700通ほどだった専任宣教師の召しの申請書の提出が,一気に4,000通以上に跳ね上がった。また,モンソン大管長の発表以前,14パーセントほどであった姉妹宣教師の申請が,50パーセント以上となった。宣教師になる推薦を受けるべく,たくさんの若人が列をなして神権指導者の面接を待っている光景がそこここに見られるという。世界中の15か所の宣教師訓練センターにとっても寝耳に水であった。今後,増加する宣教師に対応するため,訓練プログラムの変更,訓練期間の短縮,職員の増員,施設の増設などを迫られることだろう。

ただし,18歳で伝道に出るというのはあくまで選択肢(オプション)の一つであって,教会がそれを勧めているわけではない。モンソン大管長はこう語る。「わたしは,すべての若い男性がこの早い年齢で伝道に出るようになるとか,出るべきであると提案しているわけではありません。むしろ,個人の状況と神権指導者の判断に基づいて,この選択肢が可能になった,とお考えください。」十二使徒のラッセル・M・ネルソン長老も言う。「(大管長の)言われたこの年齢の変更は,さらに多くの若い男性と若い女性が宣教師の奉仕の祝福を享受することを認める“オプション”です。」

高校卒業後,伝道に赴く

東京ステーク小岩ワードの榎本義行兄弟は1997年に伝道に赴いた。当時,伝道に出られる年齢は19歳だったが,榎本兄弟の誕生日は4月30日であり,高校卒業後わずか1か月余りで19歳を迎える。そこで榎本兄弟は高校3年の1月に伝道の申請を出し,召しを受けて,高校卒業後間もない5月に伝道に出た。いわば,モンソン大管長の語る,高校卒業後すぐに伝道に行くというオプションをそのまま経験したことになる。

榎本兄弟は7歳のときに父親を亡くした。教会で接する宣教師たちは父親代わりのようであこがれの存在だった。ユースミッショナリー(青少年が宣教師と一緒に伝道するプログラム。一定期間,宣教師アパートに泊まって宣教師と行動を共にする)に参加し,困難な状況で与えられる主の助けを体感した。高校3年生になったとき,榎本兄弟は大学受験は考えていなかった。「伝道しかないだろう,と思っていました。」高校卒業後にすぐ伝道に出ることの利点を榎本兄弟はこう語る。「受験勉強に煩わされないので,教会の活動に積極的に参加できました。セミナリーはもとより,ユースカンファレンスでは委員長会を務め,霊的にも伝道の準備をすることができました。もっとも,英語だけはしっかり勉強していました。伝道に出てからも宣教師大会は英語で行われますし,英語力を伸ばす機会がありました。」

福岡伝道部での経験から多くを学んで帰還した榎本兄弟は,渡米し,英語学校で4か月,大学教育に必要なレベルの英語を身に付け,短大に入学。卒業後,ブリガム・ヤング大学(BYU)プロボ校の3年に編入し,会計学を学んだ。

どのような困難にあっても

BYUハワイ校の学長は,こうした,高校卒業後すぐに伝道に行って帰還した学生を積極的に受け入れると表明している。

もちろん,そこにはリスクもある。大学教育についていくだけの英語力を身に付けるのは並大抵ではない。また,アメリカの大学では一般に学生を厳しくトレーニングする。榎本兄弟はこう振り返る。「毎日,40ページほどの読書課題が出るんです。もちろん全部英語です。それを予習しておかなければ授業についていけません。3教科受講していれば1日120ページです。学生たちは皆,図書館で夜中まで勉強しています。わたしの人生の中であれほど主に頼り,必死に勉強した時期はありませんでした。」入学は難しく卒業は比較的容易な日本の大学と対照的に,アメリカの大学は入学の門戸は比較的広く,脱落せずに卒業まで行くのは難しい。さらに,アメリカの大学を出ても学科によっては日本での就職の門戸は広くはない。教職や医療関係など日本の国家資格が必要な職には就けない。留学すればすべてがバラ色というわけではない。

榎本兄弟はBYUプロボ校で会計学を修めた後,カリフォルニアの大きな会計事務所に就職して4年間の実務経験を積んだ。そこでアメリカの会計士の資格も取った。榎本兄弟は,アメリカの大学を出てすぐに帰国し日本で就職を探すよりも,アメリカで数年間働いて実

績を作ることを勧める。(アメリカの大学を卒業した留学生は,1年間アメリカで働ける。就職先で実務能力を認められれば,企業側がさらにビザの延長を支援してくれる。)今日の企業は,ただ英語ができるだけでなく,即戦力となる実務のスキルを求めている。実務経験と,客観的に提示できる実績があれば,日本に帰って来て就職先を探す際の武器になる。榎本兄弟もその実績を買われ,日本で外資系の保険会社に就職することができた。

日本の大学,アメリカの大学のいずれにしても昨今の経済情勢では就職は容易ではないかもしれない。しかし,そうした困難な局面でこそ,伝道を通じて身に付けた福音の原則が生きてくる,と榎本兄弟は言う。「どんなに大変な状況でも,主に頼って,自分にできることを行っていくとき,乗り越えることができます。」

そうした福音の原則を経験によって身に付けられるのが伝道の大きな果実であり,それは本人にとって永遠の財産となる。心の大きな変化宣教師になる備えについて生じる最も大きな変化は,宣教師候補者自身の内側から生じなければならないと,十二使徒のジェフリー・R・ホランド長老は述べた。

「宣教師候補者は成熟し,成長し,伝道前の備えについてもっと真剣に考えるように求められるでしょう。それには,あらゆる面における個人的なふさわしさと福音の研究─特に聖典と,教会の宣教師の手引きである『わたしの福音を宣のべ伝えなさい』を研究することが含まれます。」

「この(大管長の)発表は皆さん(青少年)についての発表ではありません。それは,皆さんが証するように召された,美しく純粋なメッセージについての発表なのです。」

「皆さんは個人のふさわしさと福音の知識を身に付けなければなりません。」ホランド長老はそう続ける。「皆さんには伝道の初日から効果的に教えてもらいたいのです。」─高校卒業後すぐに伝道に赴くというオプションを選択するためには,「初日から」福音を教えられるよう,青少年の間に,福音の知識を得る(頭で理解する)のみならず,福音を身をもって(心で)理解する─すなわち改心(Convert),心の大きな変化を経験する必要がある。(本誌ローカルページ 1,地域会長会年頭メッセージを参照)信仰をもって福音の原則を行動に移すとき,その人の心が変わり,聖霊の光を受けて福音を心で理解する。別の言葉で言えば,証を得るのである。

2007年に全国YSAカンファレンスが開かれたとき,来日した十二使徒のデビッド・A・ベドナー長老は,この「行動することによって学ぶ」という原則を説いた。

この2013年1月から始まる青少年のための新しい教科課程「わたしに従ってきなさい」は,ベドナー長老の言う,信仰による行動と学びの原則に従って設計されている。

救い主のように教える

この教科課程では,救い主がどのように人々へ福音を教えられたかに倣って教える。すなわち─救い主が人々を愛し,癒し,仕えられたように,生徒を愛して,生徒一人一人の直面している課題やチャレンジを知り,そこに焦点を合わせて教えるテーマを選ぶ。愛と関心が青少年の心を開く。

救い主のように聖文を用いて教える。救い主がしばしばたとえで教えられたように,簡潔な物語,たとえ,実例を用いる。教材として活用できる動画も数多くあり,青少年の視聴覚に訴えかけることができる。

また,深く考え感じさせる質問をし,青少年が自分の考えや個人的な気持ちを分かち合うのに耳を傾ける。さらに証をするように勧める。青少年が自ら福音の原則を教える機会も設けられる。ベドナー長老は,自ら発言することや証することも信仰によって行動することであり,それは心を変化させる,と教えた。

そして青少年に,信仰によって行動し,教えられた真理を実践するように勧める。教室にとどまらず,実生活の中で福音の原則を応用するように促す。ここにも「行動する」ことで御霊を受けやすくなるという原則が生きている。(詳細は上記のURLにて。動画などで分かりやすく説明される。)

ホランド長老はこう付け加える。「親である皆さんに。この備えに本気で取り組んでください。皆さんの子供たちを伝道に備えるのは,教会や宣教師訓練センターやセミナリーの責任であると思ってはなりません。この備えで最も重要な役割を果たすのは親の皆さんです。」─子供に福音を教え,御霊を感じられるよう助け,伝道に備えるのは,福音の主体※2 である家族と個人の責任であることを強調しているのである。◆

http://bit.ly/TxDnPF