リアホナ2013年12月 全国手話交流会を開催

全国手話交流会を開催

─手話という,もう一つの言語を話す兄弟姉妹たちの霊性

9月21 日(土)から23 日(月・祝)の3 日間,福岡ステーク主催で全国手話交流会が開催された。これまでの会(ろう者の集い)はおもに関東方面で行われており,今回が福岡での初めての開催となった。ろう者が17人,健聴者35人の計52人が全国から集まった。初日の21日は日本福岡神殿で死者のためのバプテスマを,儀式の執行をろう者中心で行った。この交流会のとりまとめをした福岡ステーク高等評議員の緒方節男兄弟は,バプテスマ会に同席しての感想を,「真心が感じられるんです,手話と言葉(音声)で。一所懸命声を出して読まれるんです。非常に心がこもっているのと静かなのでとても霊的です」と語る。22日は福岡ワードの会員とともに聖餐を受け,日曜学校はろう者の会員での証会となった。集会後,アジア北地域管理本部翻訳マネージャーの宮川史彦兄弟による「手話を正式な教会言語として認めてもらうには?」と題するセミナーが行われた。手話言語に関する教会の現状を聞き,手話による総大会の通訳の試作の動画を見る。ろう者から多くの意見や要望が出された。最終日の23日は朝から,日本語字幕と手話通訳付きのエンダウメントと結び固めの儀式が福岡神殿で行われた。

 「全国のろうの方々が集まるから,全国手話交流会にしたらどうかと提案しました」と緒方兄弟。この交流会(ろう者の集い)はもともと,手話通訳付きの神殿参入を目的として行われてきた,と交流会の発案者である松戸ステークつくばワードの井上幸子 姉妹は話す。彼女は約20年前にアメリカのジョーダンリバー神殿でろう者支部の団体参入を経験した。ろう者の儀式執行者がエンダウメントの儀式で奉仕する様子を見て井上姉妹は衝撃を受ける。「日本ではとても考えられなかった。」日本では健聴者が儀式を執行し,ろう者の会員は受ける側にある。「少しずつろう者自身で儀式執行する機会を増やしていきたい。最初から全部はできません。だから毎年(交流会を)続けていく必要があります」と井上姉妹は言う。

日本手話と日本語は別の言語です

 さらに今,この会の趣旨について緒方兄弟は付け加える。「日本手話を教会の正式な言語手話として認めていただくことです。」現在,教会ではアメリカ手話が正式な言語手話として使われている。日本語と英語が違うように国によって手話も違っている。総大会などで表示されている手話はアメリカ手話なので,多くの日本人ろう者には理解できない。

 NHK 手話ニュースキャスターや手話通訳者として活躍している田中清姉妹は語る。「ろうの皆さんには手話で福音を理解したい,手話で話がしたいという気持ちがあります。福音を理解するために聖典を読むとしても,そこに何か書かれているかを(彼らは)理解することが難しいのです。」日本手話は,日本語とはまったく違う一つの言語であって,日本語をそのまま手話に置き換えたものではない,と田中姉妹と井上姉妹は口をそろえる。日本語をそのまま手話に表していると思っている人が多いため,ろう者に対する誤解もある。すべてのろう者が日本語を円滑に読めるわけではない。「日本語のモルモン書があるのだからそれを読めばいいというのは,耳の聞こえない赤ちゃんに『日本語を習得してモルモン書を読めばいい』と言うのと同じです」と田中姉妹。

 また手話交流会について田中姉妹はこう続ける。「このときは,自分の持っている言語で皆と話せる,それだけで癒されるんです。こうして会うことで,帰って独りでまた頑張れるんです。」「今回は,福岡の皆さんに,手話が大事だということを知っていただきたい。それが目的ですね。ろう者の方によっては自分のワードで声高らかに手話でやってとは言えない。そういうところを愛をもって理解し,考えに入れていただきたいです。」

 井上姉妹も,ろう者だけでなく,健聴者とろう者の両方がいることのできる教会を目指したいと語る。「ろうの世界だけでは(教会に関する)情報が非常に少なくなります。お互いに理解し合う。それを大きくしていきたい。だから交流会にろう者が一人で参加するよりも,同じユニットのだれか(健聴者)と一緒に参加して,帰って感動を広めてもらいたいのです。」

 神殿参入やセミナーの後はろう者と健聴者が入り交じって食事と歓談をした。感情があふれ出るような手話で会話するろう者の表情は皆,輝いて活気に満ちていた。

 全国手話交流会は,来年も開催される予定である。◆