リアホナ2013年8月号  2013年度の地域における福祉活動の強化

2013年度の地域における福祉活動の強化

  (地域福祉部)

自立③/3

過去2か月にわたって,聖文と教会指導者の模範から自立に関する記事を連載してきました。このシリーズ最後となる今回は,情緒的および霊的な自立を強化するうえで役立つ原則と実践例に焦点を当てます。

身体的健康と情緒的健康の関係

情緒面の健康は身体の健康と密接に結びついています。そのため,身体の健康に配慮することは欠かせません。健康に良いバランスの取れた食事をし,適切な休息と睡眠を取り,定期的に運動し,くつろぎを与える健全な活動をすることは,身体,情緒,及び精神の健康に欠かせません。

神への信頼により情緒的・霊的自立が高められる

さらに,天の御父とその御子イエス・キリストを信頼することによって,情緒的・霊的な自立が養われ強化されます。救い主御自身の言葉に,わたしたちが主にどれほど頼っているかが明確に示されています。「わたしはぶどうの木,あなたがたはその枝である。もし人がわたしにつながっており, またわたしがその人とつながっておれば,その人は実を豊かに結ぶようになる。わたしから離れては,あなたがたは何一つできないからである。」(ヨハネ15:5)人は神に依存した存在であることをへりくだって認め,神に信頼を寄せるとき,わたしたちは憐れみと恵みを受けます。神の憐れみと恵みは,わたしたちがついに完全を受けるまで(教義と聖約93:11-14),束縛から解き放し(モーサヤ29:20),試練や災難,苦難の中にあって支え(アルマ36:3),わたしたちの能力以上にわたしたちを強めてくれます(ピリピ4:13;ヨハネ15:1-11;アルマ26:12)。

ストレスへの対処法を学ぶことにより自立を高める

とはいえ,人生というものの性質上,問題に直面することは避けられません。問題に直面することで時にストレスを感じ,押しつぶされてしまうように感じるかもしれません。ストレスへの対処法を身に付けることは,情緒的な自立を促進・維持するうえで重要なことです。ストレスが慢性化すると,意欲や,考えたり物事に集中したりする能力が衰えてしまうことがあります。健康状態が悪化して,病気を引き起こすリスクが高まり,精神疾患を招くことさえあります。有効なストレス対処法を学んで実践することにより,情緒的自立を促進することができます。参考に以下のようなストレス対処法を列挙します。

● ストレスのもとになっている原因を見定め,それに対して取り組む

● 問題の様々な側面のうち,自分で変えられる面と変えられない面を区別する

● ストレスになっているもののうち,変えられる面に取り組む

● コントロールできない面をありのままに受け入れる(ただし同意する必要もなければ好きになる必要もない)。できないことにではなく,できることに集中する

● ストレスを感じたら,ストレスの原因になる事柄を頭の中に留めておくのではなく,書き出してみる

● しなければならないことについて心配するのではなく,計画を立てて行動する

● ストレスに対処する情緒的,精神的,身体的,霊的な能力を高める

ストレスに対処する能力を高める:マインドフルネス※1

人が経験することには,認識的・情緒的・生理的・行動的・霊的な側面があり,それを理解すると問題に対処する際に役立ちます。人の主観的な経験は,これらの側面が絡み合ってできたものです。思いやりを持ち,裁いたり評価したりせずに,経験の個々の側面に一つずつ注意を向けることは,自分自身をより明確に理解する一助となります。こうすることで「現在あるとおりの……物事」(教義と聖約93 :24 )として経験を認識する助けとなり得ます。自分の経験だけでなく,他人の経験についても同様の見方をすることによって理解できることですが,わたしたちの苦しみの多くは,自分自身や隣人,経験,さらには天の御父に対してでさえ,物事をただあるがままではなく,むしろ「こうあるべき」あるいは「こうあってはならない」と考える思考のレンズを通して,厳格で融通の利かない見方をしてしまうことから来るのです。わたしたちには,思考は思考,感情は感情などとして認識できるようになる能力があります。このような感覚を磨くことは,思いと心に告げてくださる御霊を認識する感性をいっそう養うことの一助となります(教義と聖約8:2)。

この原則の応用の一つはマインドフルネス訓練法あるいはマインドフルネス瞑想法です。原則自体はきわめて簡単ですが練習が必要になります。呼吸する感覚にただ意識を集中する方法がその一例です。この訓練はいすや床に座って行うとよいでしょう。楽な姿勢で座ったら,呼吸を変えようとせずに,息を吸ったり吐いたりする感覚に集中します。思いや外部要因によって集中が妨げられたら,ただその思いに気づき,そっと注意を呼吸に戻していきます。少なくとも7分間これを続けます。この方法を通して気づいたことに意識を向けてみてください。

この方法のもう一つの有効な応用は,思いに注意を向けることです。どのような思いが心に浮かんできたかをただ観察し,穏やかに認識し,その思いを裁いたり,あるいは執着したりせずに流してあげます。こうした練習は,思考は思考,感情は感情などとして認識する一助になります。そうすることにより,自分の思いや感情にコントロールされるのではなく,自分で思いを認識し,選ぶ力を増す助けになります。

自立の真の目的:奉仕をすることを可能とする

マリオン・G・ロムニー管長が語ったように「だれにでも自立している部分と依存している部分があります。」(「日の栄えに至る自立の本質」『リアホナ』2009年3月号)そのためわたしたち皆に,自立して同胞に仕えるという,人生の旅に参加する特権が与えられているのです。御自身の子供たちを愛し,お仕えになる神のようになるためです。神と自分自身と隣人を愛するという第一と第二の大切な戒めがこの奉仕の中心にあります(マタイ22:36-40)。わたしたちが自立の真の目的を理解できるように,そしてアルマがその民とわたしたちに与えた勧告の中で明確に教えているとおり「重荷が軽くなるように,互いに重荷を負い合うことを望み,また,悲しむ者とともに悲しみ,慰めの要る者を慰めることを望〔む〕」ことができますように(モーサヤ18:8-9)。◆

※1─マインドフルネスとは,物事を裁いたり評価したりせずに,ありのままに気づくこと