リアホナ2012年9月号  教会の職業支援センター「ワークリンク・久慈」がオープン

教会の職業支援センター「ワークリンク・久慈」がオープン

─被災地人道支援が新たな段階に

2012年8月4日(土),東日本大震災復興支援として教会が提供する職業支援センター「ワークリンク・久慈」が岩手県久慈市に開設され,開所式が行われた。

   東日本大震災への教会の被災地支援は,緊急支援段階での被災者への生活物資の提供,復興支援段階での地場産業(漁業・林業・農業)への支援を経て,就労支援という新たな段階に入った。教会の福祉の原則は,被援助者の自立を助けることであり,その意味で,被災者の方が職を得て自立していくのをサポートする職業支援は,被災地支援の最終段階と言える。

 教会福祉部は,岩手・宮城・福島の被災三県でそれぞれ職業支援センターを開設し,今後3年にわたって支援を継続する。地域社会の必要を見極めて支援先を決めるに当たり,これまで教会の被災地支援に協力してこられた岩手県議会の清水恭一議員と相談した。その結果,岩手県北部の太平洋沿岸に位置する久慈市に白羽の矢が立った。

 「ワークリンク・久慈」は,JR久慈駅から徒歩10分ほどの久慈市街中心部に位置する。57坪ほどのスペースに無線LANが備えられ,インターネットを介した職業情報検索コーナーや個別就職相談室,会議室,コワーキングスペース(パソコン・ファックス・テレビ会議システム・複写機などの事務所機能を持つ,個人で働く人の共用の仕事場)などを備えている。ここでは,求人・就職情報の提供やスキルアップ支援,キャリアワークショップ(30秒自己表現,人脈の開拓と活用,効果的な面接のノウハウ,履歴書の書き方,など),内職・起業支援,セミナーや講演会の開催などを通じ,相談者の就労意欲をサポートしていく。

 「この職業支援センターの基本的な精神は,自分たちのやりたい支援ではなく,とにかく地元の人に寄り添って,その必要を汲み上げ,その人たちが利益を受けるように支援していこう,ということです。『あなたの「働きたい!」をサポートします』がスローガンです」と,ワークリンク・久慈の竹田 範雄 センター長は語る。被災地の現実として,働く意欲があり職を必要としていても,家族の介護や子育て,仮設住宅からの交通手段の不備などで通勤がままならないケースが,特に女性に多い。その必ニーズ要に寄り添うべくワークリンクが今,重視しているのは,インターネットを通じて自宅で働く「テレワーク」である。

 その最初のステップとして8月下旬にパソコン教室が開かれた。「ワード,エクセル,パワーポイントといった基本的な業務向けソフトの使い方を教えますが,そこに教会の提供するキャリアワークショップのプログラムを織り込んでいます。パソコンのスキルの習得がそのまま就業のための訓練にもなっています」と西原長老は言う。例えばキャリアワークショップに「紋章」という活動がある。「何世紀も前,紋章は,盾や,かぶとや,戦いにおいて騎士の身元を証明するための銘文から成っていました。紋章にある象徴はそれぞれ,騎士が人生でなした業績や傑出した能力を顕示するものでした。」※注 この「自分の紋章」をパソコンで作成する実習は,パソコン操作のスキル習得はもちろん,同時に自身の能力や強みを再認識し,雇用主に向けて自分を表現する訓練でもある。こうした研修を皮切りに,スキルアップのレベルに応じて,録音されたものを文章に起こす,ウェブサイトやメールマガジンを制作する,といったテレワーク業務で収入を得る道が開ける。

 ワークリンクはこれからNPO法人格を取得し,独立した職業紹介所として機能していく。行政や他の支援団体と協同しながら,就労を求める市民に幅広く活用される場となることを目指している。この秋には久慈市に続き,宮城県牡鹿郡女川町に「ワークリンク・女川」の開設が予定されている。◆