リアホナ2012年10月号  南三陸森林組合に自走式樹木伐採運搬機を寄贈

南三陸森林組合に自走式樹木伐採運搬機を寄贈

─被災自治体の復興に向けて,町の高台移転と災害公営住宅供給を支援する

去る8月9日に教会は,宮城県本吉郡南三陸町の南三陸森林組合への林業支援として自走式森林伐採運搬機(ハーベスタ)を寄贈し,寄贈式典が行われた。式典には教会から,福祉部のダーウィン・W・ハルヴォーソン部長が出席し,南三陸町森林組合の佐 藤久一郎代表理事組合長に目録を手渡した。ハーベスタとは一般に農産物の収穫機械のことで,林業においては,自走して山に入り,その場で樹木の伐採,枝払いと皮むき,運搬に適切な長さへの切断までを行う機械のことを指す。パワーショベルの腕の先端に伐採機械が付いたような形状をしており,前面には伐採時に車体を安定させるブレードが付いている。

 東日本大震災において南三陸町では,市街地の広い範囲が津波被害を受け壊滅した。3階建ての屋上からさらに2メートル上まで津波にのみ込まれた町の防災対策庁舎は骨組みだけが残った。犠牲になった職員と町民のため庁舎前に供えられる花は今も絶えることがない。

 この悲劇を繰り返さないため,同様に被災した三陸海岸の市町村の中にあって南三陸町はいち早く,町の高台移転を決定した。それに伴い,居住エリアに1,000戸の災害公営住宅建設が計画され,そのうちの300戸を,地元産の三陸杉の地産地消による木造建築とすることも決まった。そこでは林業のみならず,製材,建築,電気工事など多くの分野で雇用創出が見込まれる。

そのため南三陸町森林組合は,杉の伐採シーズンが始まる今年9月に向けて準備を進めてきた。同組合は,今後5か年計画で建設予定の公営住宅建築工事において大量の木材の供給を担うことになる。その過程で,このハーベスタは大きな戦力となることを期待されている。オペレーターの訓練のため,来年1月までは平地で,従来どおりチェーンソーで切り出された木材の枝払いと切断作業を行う。それ以降は自走して山に入り,本格的に稼働する予定である。この地の杉は,製材するときれいなサーモンピンクの杉材となる。それを南三陸杉ブランドとして売り出し,地元の長期的な復興につなげる計画だという。

 式典において佐藤組合長は,今回の寄贈を,復興に向けてはもちろん,次世代の(受け継ぎとしての)森の育成とつなぎのために活用し,山をずっと守っていきたい,と簡潔に感謝と決意を述べた。ハルヴォーソン部長は,イエス様の弟子として,こうして少しでもお手伝いできてほんとうにうれしい,とあいさつした。

 今,切り出されている杉は樹齢60年以上のもので,戦後すぐに植林された杉を山主が性急に伐らず,忍耐して大切に手入れしてきたものだという。被災からの復興には長い時間がかかるが,林業を営む人々は元から長いスパンで物事を考えている。「60年というと2世代,自分の孫のために木を植えるようなものですよね。その,世代を越えた命の受け継ぎに敬意を抱きます」とハルヴォーソン部長は語った。◆