リアホナ2012年6月号 福祉のABC 20

福祉のABC 20

 (地域福祉部)

倹約

今日の教会福祉計画は1936年に導入されました。当時,福祉計画の第一の目的が次のように述べられています。「忌まわしい怠惰を打破し,施しのもたらす悪弊を除去し,独立心,勤勉,倹約,自尊心を再びわたしたちの間に確立する体制を築くことである。教会の目的は,人々の自助努力を助けることにある。」(Conference Report,1936年10月,3)

この言葉の中には,日々の生活で聞き慣れない単語もあるでしょう。ある人々にとっては,まったく未知の概念かもしれません。あるいは,概念を理解したとしても,そのように生活していない人々もいるでしょう。倹約というのは,なかなか実践されていない言葉の一つのように思えます。ここで使われている倹約(原文ではThrift)の辞書的な意味は「金銭を管理する際の知恵と用心深さ」です(Dictionary.com,“Thrift”〔倹約〕の項)。

興味深いことに,「倹約」という言葉は聖典の中にはありません。しかし,探求心に富む読者は英語版の「項目別ガイド」(Topica l Guide)の中の,「家族」の項目の中に,「家族の中で財政を管理する」(Family,Managing Finances in)という項目を見つけることでしょう。この見慣れない見出しの下には,参照聖句が幾つか記されています。最初の参照聖句はハガイ書にあります。預言者ハガイが主から遣わされたのは,人々に,自分のことを考えるのをやめて神殿を建設するよう促すためでした。ハガイは人々を教える中で彼らを叱責し,言いました。「賃銀を得ても,これを破れた袋に入れているようなものである。」(ハガイ1 :6 )一生懸命稼いだお金を穴だらけの袋に入れているところを想像すれば,こっけいに思えることでしょう。ここで示されていることは明らかです。わたしたちは無意味なものやまったく無駄なことのために,お金を使ってしまうことがあるのです。

小冊子『真理を守る』には,興味深い場所に倹約という言葉が出てきます。「ギャンブル」の項にこのように書かれています。「ギャンブルの動機となっているのは,何の努力もせずに何かを手に入れるという望みです。この望みは霊的破壊をもたらします。ギャンブルはこの行為に関与する人を,救い主の教えられた愛と奉仕から離れさせ,サタンの利己的な快楽へと導きます。労働と倹約の美徳,何をするにも正直に努力するという望みを台なしにします。」ギャンブルはお金の無駄遣いでしょうか。そうです。しかし,ギャンブルはそれ以上に人の霊性を傷つけます。末日聖徒はこれを避けるようにと勧告されています。さらに,倹約に努めることは,わたしたちが主に頼り,人々に愛を示し,霊的に成長するうえで助けとなります。

「項目別ガイド」にあるほかの聖句にも,財産を賢く使うためにできることについて,勧告が記されています。什分の一とその他の献金を納める。貯蓄をし,所有物や受け取った物を管理する。単身か,核家族か,3世代家族であるかにかかわらず,自分の家族を養う。興味深いことに,わたしたちに財産を祝福してくださる主は,わたしたちがその財産を地上でどのように使うかについて,とても関心を持っておられます。

「項目別ガイド」の最後の聖句は,教義と聖約第88 章119 節です。「すべての必要なものを用意しなさい。」この聖句は,将来を展望する必要があるという意味であると言ってもよいでしょう。毎回の給料でぎりぎりの生活をすることから抜け出し,生活を整えるべきです。預言者たちはしばしば「収入の範囲内で生活しなさい」と言っています。最近ではトーマス・S・モンソン大管長がこう述べています。「収入の範囲内で生活するよう強く勧告します。収入以上の生活を送れば,支払い能力は失われてしまいます。収入の範囲内で生活するなら,不必要な借金の次の返済にいつも頭を悩ませているときよりも,もっと幸せになれると約束します。教義と聖約にはこう記されています。『契約によって生じた負債を支払いなさい。束縛から自らを解放しなさい。』」(「真理を守り」『リアホナ』2006 年5月号)

ヘンリー・B・アイリング管長は,住宅ローンなどの負債を返済するためにできる限りのことをするようにというエズラ・タフト・ベンソン大管長の勧告に従うよう促された自分の経験について話しました。アイリング管長は妻と相談し,主を信頼しました。すると奇跡が起こり,住宅ローンを完済できたのです(「神を信頼し,行って行う」『リアホナ』2010年11月号参照)。

小冊子『すべての必要なものを用意しなさい─財政管理』には,倹約して生活するための簡潔な方法が記されています。それは,(1 )什分の一と断食献金を納める,(2 )負債を避ける,(3 )予算を立てる,(4)貯蓄する,(5)家族を教える,です。今日の沈滞した経済状況にあって,浪費や借金などの危険な行為を正当化するのは簡単です。しかし,わたしたちは生ける預言者たちによって,世に打ち勝つように教えられてきました。わたしたちは,できる限りのことをすべて行い,主の憐れみに頼り,主の次の約束を信じます。「地は満ちており,十分にあり余っている……。まことに,わたしはすべてのものを備え,人の子らが自ら選択し行動する者となるようにした。」(教義と聖約104 :17 )◆