リアホナ2012年8月号  先祖の心を子孫に,子孫の心を先祖に エリヤの霊を経験した若い世代

◉先祖の心を子孫に,子孫の心を先祖に エリヤの霊を経験した若い世代

青少年と家族歴史 ─仙台ステーク長町ワード 石澤真理子姉妹

2011年秋の総大会で,十二使徒定員会のデビッド・A・ベドナー長老は家族歴史について話した。1836年4月3日,カートランド神殿に預言者エリヤが現れ,先祖と子孫を結び固める神権の鍵を回復したことを振り返り,「エリヤの霊は教会員と教会員でない人の双方に影響を与えています。しかしながら,キリストの回復された教会の会員であるわたしたちは,自分の先祖を探し出し,先祖のために福音の救いの儀式を行うという,聖約を伴う責任を負っています」※1と語る。そして特に青少年や若い会員に向け,彼らが得意とするパソコン,携帯端末,インターネットなどを駆使して家族歴史活動に貢献するよう,何度も繰り返して強く勧めた。

地球の反対側でその説教を聴いていた仙台ステークの温井かおり姉妹は,「びっくりしました!」と言う。─「青少年に家族歴史を」それは,温井姉妹が家族歴史相談員を務める長町ワードでここ数年来取り組んできたことそのものだったからだ。

長町ワードの取り組み

2 0 0 8年春から長町ワードでは青少年に,自分の先祖の名前で死者のバプテスマを受けるよう奨励し,東京神殿へ年2回の団体参入を行ってきた。またミューチャルの活動で,パソコンを使って個人の先祖ファイル(PAF)に先祖の名前を入力する方法を学んだ。さらに「長町ワードたすけあい」と称し,ワードの会員の先祖の儀式を,青少年を含むワード全体が協力して進める。2009年にかけて,2つの家族から提出された400人の先祖の儀式を行った。

2010年にはニューファミリーサーチが限定リリースされ,インターネットを通じて家族歴史の情報を記録できるようになる。当初は,仙台ステークセンターである上杉ワードまで通って作業していたが,2011年1月には長町ワードにネット回線が設置される。それを機に,日曜学校の家族歴史教義クラスが始まった。「4回の教義のレッスンを経て,それ以降は実習が始まります。」実習とは,パソコンからインターネット経由でニューファミリーサーチに実際に名前を入力していく作業である。

2011年10月,冒頭のベドナー長老の説教があり,それまで若い世代への家族歴史活動を着々と準備してきたビショップリックと家族歴史相談員たちは,意を強くしてさらなる取り組み(※右コラム参照)を進める。11月には,ニューファミリーサーチにアクセスできるパスワード保持者が増員され,新たに登録された会員が翌2012年1月から教義・作業クラスを受講する。2月には長町ワードに無線LAN※2が設置された。

石澤真理子姉妹と家族歴史の出会い

そしてその2012年2月8日,家族歴史相談の予約を入れた石澤真智子姉妹と一緒に,高校3年生の娘の真理子姉妹がやって来た。真理子姉妹は当初,母親の真智子姉妹の相談を横で聞いていた。相談員の温井姉妹はこう振り返る。「ちょうどパソコンをいっぱい出してたので,ちょっとやってみない? って。」真理子姉妹も言う。「やっぱり(家族歴史は)大人の人がする,ちょっと難しそうな作業というイメージがあったので,最初はそんなにやりたいというわけではなかったんですけど。」まずは「取りあえず」,両親が調べた先祖の名前を,インターネット経由でオンライン接続したニューファミリーサーチに入力していく作業から始めてみた。

真理子姉妹はそれまでほとんどパソコンに触れたことがなく,ゼロからの出発だったが,温井姉妹ら家族歴史相談員や家族歴史ボランティアの兄弟姉妹の親身な指導を受けるうち,どんどん上達して入力速度も早くなっていった。「1回体験すれば,入力の順序や基本的な作業は覚えられます」と温井姉妹は言う。

「作業を始めてすぐにおもしろいと感じました。手順は思ったより単純というか,特に難しくはなく,ほんとうにやりやすい単純作業なのでどんどん次に行けるし。」

それまで真理子姉妹は先祖についての認識がさほどなかった。「おばあちゃんのその先は全然分かりませんでした。関心もまったくなかったんですけど,お母さんから少しずつ,人柄とか,こんな風に生きてた人,何をしてきた人とか,教えてもらって。何となく流れが分かってきて,だんだん親近感もわいてきました。」

初めて自分で提出した儀式カード

3月中旬,真理子姉妹は自分の手で入力して印刷した「家族の儀式の要請書」を神殿に提出した。それによって発行された神殿カードを東京神殿で受け取り,提出者として石澤真理子姉妹の名前が印字されたカードで,初めて神殿の儀式を受ける。「ここに自分の名前があるっていうのもうれしかったし,身近な先祖の儀式を自分が受けられるんだっていうのもうれしかったです。」このとき真理子姉妹が身代わりとなった,母方の祖父の母親(曾祖母)は,身分的な事情で自分の息子を手ずから育てることができなかったという。彼女の身元も分からなかったものの,神殿の儀式は曾祖母の両親までさかのぼって施された。

その儀式の前後,真理子姉妹はずっと,「御霊を感じることができて。すごく温かい気持ちがあって,大きな祝福だなと思いました。(先祖に)喜んでもらえたんだな,というのが分かりました。早く儀式を受けてあげたい人がたくさんいたので,母もすごく喜んでくれて。それはもう,うれしかったです。」

「また,お母さんのきょうだいに,わたしと同じ字なんですけど真理子おばさんっていう方がいて,赤ちゃんのうちにおなかをこわして亡くなったんです。おばあちゃんが,名前が良くなかったんじゃないか,って言うから母が怒って,わたしに同じ名前を付けたんですけど(笑)。つい最近のステーク団体参入のときにその方のバプテスマから結び固めまでができて。(身代わりに,真理子姉妹がバプテスマと確認,母親の真智子姉妹がその後の儀式と結び固めを受けた。)名前もそっくりなので,そういう意味でも親近感がありました。赤ちゃんのうちに亡くなったので,早く親と結び固められたいだろうな,と思って。」

若い世代に伝えたい家族歴史の祝福

神殿から帰った真理子姉妹は,3月25日の聖餐会で,「神殿に参入する備え」とのテーマで話した。そのとき母親の真智子姉妹が参考資料にと勧めてくれたのは, 『リアホナ』2011年11月号掲載の,デビッド・A・ベドナー長老の説教だった。

「ベドナー長老の言葉は全部,自分自身強く感じていたことで,この総大会の言葉はほんとうに自分のためになったなあと思います」と真理子姉妹は言う。

「若い世代の人たちへのメッセージがあったんですけど,『この重要な奉仕を年長の成人だけにさせるための年齢制限はありません。皆さんは神の息子娘,聖約の子孫,王国の建設者です。皆さんは人類家族の救いの業を手伝う責任を果たすのに,特定の年齢に達するまで待つ必要はないのです。』きっぱり,待つ必要ない,って書いてあったので,つまりやらなくちゃいけないんだな,というのを強く感じました。約束されてる祝福が,ますます強まるサタンの影響力から守られる,っていうのと,この聖なる業に参加して大切にするときに,青少年の時代にも生涯にわたっても守られる,っていうのが書かれていたので。これを伝えたいな,と思って。」

真理子姉妹はこの8月,ユースカンファレンスにカウンセラーとして参加し,家族歴史セミナーで青少年に語りかける。「まず,大人がする難しい作業,って思ってる青少年には,楽しいということを知ってほしいし,儀式を待ってる人がたくさんいるのを知ってほしいです。いろんな人の話に,1人探そうと思ったら100人出てきたとか(笑)あるので。2世だから3世だから,という人でも,多分,家族歴史をやり尽くしたという家族はあまりないので。ほかの人の作業を助けることもできるし。取りあえず,やってみてほしいです,って。」

エリヤの霊を受けた人

母親の真智子姉妹はまだ独身のころ,東京でインスティテュートに通っていた。そこで,冒頭のベドナー長老の説教に出てきた原則を教えられる。「当時は『エライジャの御霊』と言っていましたけど,エリヤの霊は教会員でない人にも影響を与える,と。わたしの親族にそんな人はいないだろうな,と思ってたら,母(真理子姉妹の祖母)が利雄おじさんに連絡を取ってくれたんです。」安来利雄氏は真智子姉妹にとって祖父の弟にあたる。若いころから系図が好きで,土蔵の古い資料を夢中で覚えていたという。親族の真智子姉妹が先祖の記録を集めていることを知って,ことのほか喜び,彼が集めた大量の資料を順次送ってくれた。現在,真智子姉妹が集めている膨大な先祖の記録の大部分は安来氏から贈られたものだ。安来氏は一時,脳卒中で倒れて危篤状態に陥った。真智子姉妹は東京神殿に安来氏の名前を入れて祈った。彼は奇跡的な回復を見せ,真智子姉妹に家族の記録を送り続けるために懸命のリハビリを行ったという。そして10数年前,すべての資料を真智子姉妹に送り終えてから程なく,この世での使命を終えたかのように亡くなった。

石澤家では安来利雄氏から贈られたすべての資料と手紙を大切に保存している。それは先祖の名前のみならず,その人となりやエピソード,さらに先祖の地の古地図に至るまで,安来氏が心血を注いで探求した情報の数々である。真理子姉妹は,彼女がまだ幼いときに亡くなった安来氏のことを母親から聞かされて,ことのほか彼を尊敬するようになった。真理子姉妹が「会いたかった」先祖の筆頭がこの「利雄おじさん」だ。

「やっぱり先祖がずっといて,その一人一人に関心を持つと,すごく視野が広くなった気がします。今までほんと先祖にもいろいろな人がいて,家業のお店を潰しちゃった人もいたり(笑),お金持ってる人もいれば,すごく貧しい人もいたり……。

先祖のいた場所に行ってみるのもおもしろそうだなあと思います。今,健在な親戚の方には早く会っておきたい,さらにその先祖の方の話も聞いてみたい。先祖がどういう人だったか,記録に書かれているのを見るとすごくおもしろい。そんなちょっとした情報もけっこう重要です。その人にほんとうに親しみを感じることができるので。やっぱり青少年のうちに家族歴史を始められたのってけっこう大きいのかな,これからもっと学べるし。次の人に教えることもできるし。」

福音は物語ではない

「聖文を,本の中の昔の出来事,物語として読んでしまっているところが,幼いころのくせでまだ少しあると思うんです。

けれども今は,聖文はほんとうに現実で,現在(末日)のことを言っているんだと感じます。子供のときの見方とは正反対になりました。読む言葉全部が,今の自分に言われてるんだな,と思うようになりました。『すべての聖文を自分たちに当てはめ〔る〕』※3,そういうことだと思いますね。

『先祖の心を子孫に,子孫の心を先祖に向けさせ,全地がのろいをもって打たれることのないようにする』※4 という聖句は,この作業をしているとよく理解できます。先祖に心が向くとは,興味,関心とか親近感とか愛と感謝とか,そういうのが向かうことなんだなあ。そうやって儀式を行うとき,先祖もわたしたちに目を向けてくれてるんだろうな……すごく分かりやすい聖句だと思います。エリヤが来なかったら神殿・家族歴史の業はできなかったというのも,ベドナー長老の説教を読んで理解しました。エリヤが遣わされたことにすごく感謝しました。やっぱり背景が分かると,すべてのことに感謝できます。亡くなるまで協力してくださった利雄おじさんにもほんとうに感謝していますね。」◆

※1─1ニーファイ19:23

※2─教義と聖約110:15;マラキ4:6も参照