リアホナ2012年8月号  世の自然な関心を呼ぶモルモン書

世の自然な関心を呼ぶモルモン書

─第19回東京国際ブックフェアにモルモン書を出展

東京湾岸にある国際展示場(東京ビッグサイト)では毎年,日本最大の出版業界の展示会,東京国際ブックフェアが開かれる。今年も7月5日から8日までの4日間にわたって開催された同展示会に,教会が初めて出展した。教会は数多くの出版物を擁するが,5メートル×2メートルの小さな展示スペース(ブース)でもあることから,末日聖徒の信仰のかなめ石である『モルモン書』に焦点を絞っての展示が計画された。

ブースの壁面いっぱいにはモルモン書の構成と年代,おもな場面の絵を年表風に示した背景がはられ,モルモン書を世に出したジョセフ・スミスについて,また聖書とモルモン書の関係について説明するポスターも掲げられた。ブース中央には,約100年前に出版された『モルモン経』の初版本が展示され,モルモン書の世界を映像化した『The Testaments 証─一つの群れ,一人の羊飼い』のDVD映像も流された。この映画の救い主の生涯を描いたシーンは一般の方にもすぐ理解され,立ち止まって見入る人が多かった。そのため2日目からはこのDVDも配布し,好評を博した。

5日の開幕日には地域会長会第一顧問の山下和彦会長ご夫妻も訪れた。ブックフェアは初めて,という山下長老はこう印象を語る。「巨大な催し会場にはたくさんの出版社や企業が出展されていて,あふれんばかりの人の賑わいでした。わたしもブースをのぞきながら,人々の興奮を肌で感じてきました。モルモン書コーナーは初めての出展ですが、ひときわ目立っていました。中央には日本語版モルモン書の初版本や皇室に献上したモルモン書が展示され人々の注目を集めていました。」

この展示会には世界各国からの出展ブースもあり,多彩な来訪者があった。中国,韓国,インド,パキスタン,コロンビア,トルコ,ブラジル……中国語のモルモン書が21冊,韓国語が9冊,英語が40冊,モンゴル語が1冊手渡されたほか,会場に準備のなかったドイツ語版を送ってほしいとの要望も寄せられた。「(そうした方々が)進んでモルモン書コーナーに立ち寄ってくださることは大きな祝福だと感じました。この機会を通して,一人でも多くの方々に教会や福音についてお知らせできるようになれば,と願っています。ぜひ,来年も実施したいと強く感じました。」山下長老はそう話しつつ,ブースで奉仕した宣教師やボランティア,広報関係者に感謝を表していた。

 広報部の服部行彦兄弟はこう話す。「モルモン書は,他のブースで無料で配っているものに較べると厚さも重みもあるので普通は受け取ってくれないんですけど,案外気軽に手に取ってくださる様子にはちょっと驚いています。」

ボランティアの松本彩香姉妹も言う。「わたしは昨日,プレップミッション※1 に行って

て,やはり街頭だともらってくれる人が少なくてちょっと落ち込みましたけど,(ブックフェアでは)受け取ってくださる方が多くて,立ち直りました(笑)。実は宗教に興味あって,という方もけっこうおられて。昔なら日本で宗教ってあり得ない……でももうそういう時代でもないんだろうな,と改めて実感しました。関心を持って話を聞いてくださる方もたくさんいて,すごいな,と。」ソルトレークとハワイの訪問者センターで伝道した帰還宣教師の渡邉好栄姉妹も言う。「モルモン書を前から読んでみたかった,という方もおられましたし,わたしたちが知らないだけで,モルモン書のことや教会のことを耳にしたことのある人(の存在)を知ることができて,うれしかったです。」

実験的アプローチから見えてきたもの

「こんなに反応があると思わなかったんです。」─アジア北地域広報部ディレクターの関口治兄弟はこう話す。「わたしたちのような出展はちょっと異例ではあったと思いますね。宗教系の出版社や団体のブースもありますけど,本を販売したり広めたりするのが目的です。でもわたしたちは販売なしでやったわけですから。まったくの広報活動です。一般企業からしてみると何をもって成功なのかなという疑問があったと思います。あそこで伝道活動をすること自体は禁止されているわけではないんです。宣伝のちらしを配ることと同じですから。でもわたしとしてはできるだけ宣教師は使わずに,ブースを設置して,自由にご覧くださいというのをやろうと思っていました。」

ところが開幕初日,関口兄弟の心にある促しがやって来る。「突然ひらめいたんです。宣教師とこの教会とモルモン書がつながっているという印象を,一般やメディアの人に持ってもらいたいと。」早速,東京伝道部に電話で協力を求め,翌日から姉妹宣教師たちが交代でブースに立つこととなった。「彼女たちに,( 広報活動なので)伝道はしないということを伝えて。モルモン書は配らなくてもいいから,そこに立ってにこにこしてるだけでもいい。壁にモルモン書,って書いてあるからそれが見えるようにして,将来のためのイメージ作りでかまわない,って言ったんです。」結果的に4日間で1,000部のモルモン書を配布したが,決して無差別に配ったわけではない。関口兄弟は宣教師やボランティアに,来場者と話しながら丁寧に渡すよう促している。在庫が切れないように,配布するペースを抑制することもしばしばだった。

来場者に無記名アンケートをお願いして,この教会が世間一般からどのように見られているかを量ったところ,教会の知名度はそれほど高くないことが分かった。ことに8割の人は,モルモンと末日聖徒が同じ教会とは知らなかった。※2,左下欄外参照「伝道という観点から見ますと,教会のことを初めて聞いたという人が半数近くいるんですよ。日本の伝道が停滞しているとか時々聞きますけど,わたしはすごい可能性を感じて。つまり,何の偏見もなく教会のことを聞いてくれる人が,概算すると世の中の半分以上いるとすれば,すごい潜在量だ,彼らにまだ到達していないだけなんだと思ったんです。」

宣教師の休憩時間にモルモン書をただ積んでおくと,立ち止まり,開いて,すっと持っていく人が後を絶たず,どんどん減っていったという。「宣教師たちがプッシュするのとは違って,相当,自発的に取って行った人が多いなと思いました。日本人には,とやかく言われないで,自分で感じて手に取って,なるほど,じゃあ持って行こう,というくらいの方が合ってるかな,と。

『これ(モルモン書),前々から一度じっくり読んでみたいと思っていたんです』という方にも4,5人会いました。モルモン書の名前は前から聞いていたけど,書店に置いてないので手に入らなかったとか。中身は知らないけど,ちょっと読んでみたいとか。しかもブースに古代アメリカ大陸だとか,ちょっとわくわくするような絵があったので,こういうものなのか! 読みたい,と言う人が出てきて。─『モルモン書で洪水のように地を満たす』ということで,わたしたちは一所懸命プッシュして,人に渡してきたわけですけれど,もらう人にとっては分厚い本でしかないわけですよね。何のイメージも心躍るものもなくて。」

1830年にモルモン書が出版されたとき,パーリー・P・プラットは,天使がもたらした金の聖書があると聞いて心引かれ,手に入れたモルモン書をわくわくしながら徹夜で読みふけって証を得た。そんなふうに,モルモン書の心躍るようなイメージを的確に伝えることができれば,もっと自分から手に取りたいという人は出てくる,と関口兄弟は言う。「今回は,大河ドラマのようにタイムラインの流れがあって,ジョセフ・スミスの絵があって,聖書とのつながりやロマンを感じさせたり……いろいろと心躍るようなインフォメーションを与えることができたんじゃないかなと思っているんです。そのうえで,『じゃあちょっと読んでみたい』と踏み切る人がいて。そしてドームの中の展示物を見て『,へえ,明治天皇にも渡されたの。』そこで,『それが読みやすくなっているのがこちらです』って流れでモルモン書を渡しました。今までの伝道の中ではあまり使ったことのないアプローチでしたね。」◆