リアホナ2012年4月号 ホームレス支援のおにぎり炊き出しを10年継続─東京ステーク中野ワード

ホームレス支援のおにぎり炊き出しを10年継続─東京ステーク中野ワード

2012年1月21日(土),暦では1年中でいちばん寒さが厳しいと言われる「大寒」である。東京の気温は3.4℃,前日からの雪混じりのみぞれが朝から降り続いている。JR山手線池袋駅から歩いて10分,サンシャイン60の高層ビルに隣接する東池袋中央公園。毎週土曜日の午後4時30分になると,多くのホームレスの人々が,配られるおにぎりを求めてどこからともなくここに集まって来る。

 このおにぎり炊き出しのボランティアをしているのは,東京ステーク中野ワードの兄弟姉妹たちである。彼らの支援日は,他の団体との交代で毎月1回第3土曜日。中心となって奉仕しているのは谷口良一・喜子 ご夫妻。始まりは2002年5月,当時の扶助協会会長により「ホームレスの方々におにぎりを差し上げましょう」と企画され,1回限りの予定だった。ところが,ホームレス支援団体から「ぜひ続けていただけないでしょうか」と依頼され,以来10年以上の奉仕が続いているという。

「フードバンク」という支援団体から毎回30キロの米が持ち込まれる。家庭用1合の計量カップで200カップ以上に当たる。中に入れる具材や炊き込みご飯なども用意して,毎回約600個のおにぎりを作る。時間にして約3時間。5キロ炊きの炊飯器2台が,炊けては次のお米と繰り返される。

 この日の作業を支援したのは,初等協会から成人会員まで20人以上。その作業工程は多い。手分けし,協力して準備する。衛生手袋を利用するなど,特に衛生面については気を使う。米を研ぎ,炊く作業。熱いご飯を握る作業。出来上がったおにぎりをパック詰めする作業。現地に行って配布する作業など,手順良く進められる。

 おにぎりを配布する公園に同行すると, 定刻の20分以上前にはすでに長蛇の列で, 配布時刻が近づくと列が徐々に長くなってくる。この日の寒さにもかかわらず,青少年たちはきびきびと準備を進める。午後4時30分,配布開始。待ちきれず足早に人々が近づき,混乱が起きないよう手際よく配布していく。ホームレスの側にもリーダーがいて,数人単位で受け取る人を整理していた。配り終わるまでわずか4分足らず。長い準備作業も,この4分のために行われていた。

 この支援をサポートしている谷口喜子姉妹に,10年以上も続いた理由は何ですか?と尋ねた。「……そうですね。喜んでいただけたときの笑顔でしょうか」と淡々と答える。「いろいろ中身を変えたり味を変えたりすることを考えるのは楽しいですよ。それを食べていただいて皆さんが笑顔になれば,それでいいと思います。」近くにいた青少年に聞くと,「良い経験をしました」と一言。寒さのせいか口数は少なかったが,満足感のある笑顔で答えてくれた。

「このような支援は,かえってホームレスの人々をだめにする,という意見もありますが,彼らの自立を支援していると確信しています。いろいろな事情はあると思いますが,明日は我が身かも知れません。今の経済状況ではどうなるか分かりません」と支援している谷口良一兄弟は語る。ホームレスの方々も神様の子供であり,彼らを助ける必要があるのは確かだ。昨今は,この社会情勢にあって経済的な支援が少なくなってきており,フードバンクから米の提供が滞ったことがあった。そのときはステーク会長の厚意で米の準備がなされた。米以外の食材は毎回多くの方の支援によって支えられている。この活動が途切れないよう,中野ワードでは常に支援者を募っている。◆(須田昭仁/関東地区広報ディレクター)