リアホナ2011年3月号 ファミリー・ティップス

ファミリー・ティップス

(LDSファミリーサービス)

*Tips……豆知識,コツ,秘訣,ヒント,助言

「 わたしたちのワードのお子さんで,どのように助けたらいいか分からないのですが……」先日,電話相談に,ある初等協会の会長さんから電話がかかってきました。例えば,「クラスでじっと落ち着いて話を聞いてくれません。」「いすに座れません。床に寝転んだり,教室の外に飛び出して行ったりします。」「何度言ってきかせてもすぐに同じことを繰り返すんです。」「話していることがどうも理解できていないようなんです。」「歌を歌うとき一緒に並べません。団体行動が取れません。」……全国の多くのユニットからも同じような質問が寄せられています。これは現在,教会だけではなく家庭や学校でもよく見かける光景になってきています。

これまでこのような子供たちは,家庭でのしつけがなっていないとか,そういう性格だからとか,時には初等協会の先生の力量不足だとか言われることもしばしばでした。しかし,最近では,様々な研究や臨床経験から,このような問題行動は,子どもの中枢神経系統の機能障害によって起こるものであり,両親や初等協会の先生の責任でもなければ,本人自身の意思で引き起こしているのでもないことが徐々に分かってきました。

こういう状態は「発達障碍」と呼ばれ,「社会性・対人関係」,「コミュニケーション」,「想像力やこだわり」などの面で生活のしにくさ,難しさが見受けられます。

LDSファミリーサービスでは昨年1年間に全国19か所で,「発達障碍の子供たちへの理解と支援の方法」ファイヤサイドを開きました。また昨年訪問した約40ユニットで初等協会に出席すると,どこでも少なくとも1人から数人,発達障碍の可能性のあるお子さんを見かけます。

それでは,このような難しさを抱えて生活する子供たちをどのように支援したらいいでしょうか?

社会性(対人関係のとり方・他人の心情の理解)の不具合

認知&学習(情報の取り入れと処理のプロセス)の不具合

行動(注意や行動のコントロール)の不具合

最初に,目の前の問題がどの分野で起きているのかを観察します(上チャート)。

子供を見る視点にこの3つの軸を持っていると,これまで分かりにくかった子供の行動がよりはっきりと見えてきます。

次に一般的な対処の方法です。

まず,教室における2,3の簡単なルールを決め※1,紙に書いて掲示します。絵を添

えるとなおいいでしょう。そのうえで,増やしたい行動に対しては,肯定的な注目を与え,具体的に何をどのようにしてくれたので親や教師がどのような気持ちなのかを伝え,褒めて認めてあげましょう。減らしたい(してほしくない)行動については注目せず,しばらく様子を見て好ましい行動に移ったときに即座に褒めます。絶対してはいけない(許しがたい)行動,例えば人に危害を加える,自分や他人の命にかかわるようなことについてはあらかじめ話し合って警告を与え,それが起きたときには大人がその都度個別にきっぱりと話します。高圧的に指示を与えたり,逆に何でも受け入れたりといった接し方を避け,感情的に反応しない※2ことが肝要です。

増やしたい行動

◉肯定的な注目を与え,褒め,認める

減らしたい行動

◉問題行動には注目しない。しばらく待って好ましい行動に移ったら即座に褒める

許しがたい行動

◉警告を与え,個別にきっぱりと伝える

また,発達障碍の子供たちは突発的な出来事や予定の急な変更,環境の変化に対処するのが難しい場合があり,パニックを引き起こすこともあります。ですから, 先の見通しを持てるように前もって情報を与えることが大切です。伝えたい情報を視覚的に提示すると理解しやすいこともあります。絵カードなどが効果的です。

発達障碍は,本人がその対処の方法を自覚し,周囲の人々の協力を得ることができればほとんど支障なく生活をすることができます。それだけではなく,発達障碍がある多くの人々には,他の人々が持っていないような特別な能力が神様から与えられています。それぞれの伝えられているエピソードや研究などから,古くは天才といわれたレオナルド・ダ・ビンチ,ノーベル賞を受けたアルベルト・アインシュタイン,世界の発明王といわれたトーマス・エジソン,近年では,俳優のトム・クルーズ,マイクロソフト社のビル・ゲイツなども同じ症状があった(ある)と言われています。

その能力を早く見つけ,伸ばせるように支援するなら,本人にも周囲にも大きな喜びが花開く可能性を秘めています。

発達障碍と一言で言っても,子供によりその状態は様々で,一般的な対処だけでは通じないこともあります。また,発達障碍かそうでないのかの診断,その子が何に困難を覚えているかを判断するには,正式な発達検査と慎重な見極めが必要です。もしかしたら……と思ったら,まずは電話相談室へお気軽にお電話ください。

発達障碍・電話相談室

◉毎週日曜日 16:00〜17:00 050-5534-7832 (LDSファミリーサービス)