──中央若い男性会長会第一顧問 ギブソン兄弟と,中央日曜学校会長会第二顧問 リチャードソン兄弟が西日本の各地を訪問する
2010年11月27日(土)から12月2日(木)にかけ,中央若い男性会長会第一顧問のラリー・M・ギブソン兄弟と,中央日曜学校会長会第二顧問のマシュー・O・リチャードソン兄弟が来日し,大阪,京都, 沖縄,福岡を訪問した。11月28日(日)の晩には大阪にて特別ディボーショナルが開催され,茨木市の大阪北ステークセンターに関西地区の会員たちが集った。
鉄の棒につかまる
壇上に立ったギブソン兄弟は少年時代について語り始めた。ネバダ州の,ラスベガスから20マイルほど離れた砂漠地帯の小さな町で育ったギブソン兄弟。父親は教育者だったが,夏休みの間だけガイドの仕事をした。特に砂漠の生態のエキスパートとしてガイドをする父の影響で,ギブソン兄弟も砂漠の生物が好きになった。とりわけヒラモンスターと呼ばれる,強い毒牙が を持った大型の爬 虫類に引かれていた。
12歳のある夏の午後,ギブソン兄弟は袋と父親の懐中電灯を持って,ヒラモンスターを探しに出かけた。狙いどおり,近くの鉱山の坑道入り口でヒラモンスターと遭遇する。ギブソン兄弟の姿を見たヒラモンスターは坑道に逃げ込み,彼はそれを追いかけた。鉱石を運び出すトロッコ線路の敷かれた坑道を,懐中電灯をともして進んだ。ずっと奥で坑道は3つに分岐し,ギブソン兄弟は左の坑道を進む。ところが分岐して300メートルほど行ったとき,懐中電灯の明かりが弱まり始め,消えてしまった。辺りはモルモン書に描写された「暗黒の霧」のような,触れると感じられるほどの暗くら闇やみとなった。 暗闇のどかに有毒のヒラモンスターがいると思うと心底怖くなった。「わたしがするべき最善のことは,天のお父様に祈ることだと思いました。」道を見つけられるよう祈り求めながら地面を這は って進み,永遠とも思えた時の後に,何か冷たいものに手が触れた。トロッコのレールだった。その「鉄の棒」につかまって這い進んだが,行き止まりとなる。方向感覚を失って逆方向に進んでいたのだ。やむなくレールに沿って引き返す。そしてとうとう遠くに光の点が見え,進むにつれてその光は大きく輝きを増し,出口となった。
「リーハイの示現にある暗黒の霧の中で鉄の棒から手を離した人に何が起きたでしょうか。……わたしたちは教会員として,命の木に至る道を探すたくさんの機会があります。」そのためにたくさんの助けが与えられている。イエス・キリストの福音が道を正確に示してくれる。鉄の棒はたくさんある……そうギブソン兄弟は説き,鉄の棒の一つとしての聖文を挙げる。「聖文にしっかりとつかまり,定期的に熱心に研究し,自分の生活にどう当てはまるか時間を取ってよく考えるならば,聖霊を通して天の窓が開かれ,わたしたちがするべきことをすべて教えてくれます。そしてそれに適切に従うなら,聖文はわたしたちを支える鉄の棒の一部になります。」
小冊子『若人の強さのために』には預言者から与えられた標準と約束が記されている。ギブソン兄弟は,両親もこれを定期的に読み,それを家庭の中の基盤として,子供たちと分かち合ってほしいと呼びかけた。
また,若い男性は神権者として若い女性を見守り,若い女性はアロン神権者に神権について思い起こさせ,互いに強め合うことを主は求めておられる,と語った。「わたしたちが鉄の棒につかまっているとき,世の暗黒の霧が襲ってくるときに,わたしたちにはすばらしい少年たち(アロン神権者)が与えられています。わたしたちにはモンソン大管長をはじめ15人の預言者,聖見者,啓示者が与えられています。……主はわたしたちを御霊の力によって導いてくださいます。わたしたちが鉄の棒につかまるときに, その御声に聞き従うときに,その光に目を向けるときに,それはわたしたちを天父のみもとへと導いてくれます。」
幸福を見いだす
「幸せを感じるというのはわたしたちの人生でとても大切なことです。ただ,幸せを見つけるのは簡単ではありません」とリチャードソン兄弟は切り出した。そして,史上最も幸せであった民についてモルモン書に書かれていると述べ,そこから幸せを見つけるための大事な原則を学べると語った。また教義と聖約第25章10節を引用する。「ここには, 『この世のものを捨てて,この世に勝る世のものを求めなければならない』とあります。これは大きな原則です。」
リチャードソン兄弟は,昔,高校の聖歌隊に所属していたとき友人に仕掛けた楽しいいたずらについておもしろおかしく話して会場をわかせた後,こう続けた。「世の中にはこの世的に楽しいことがたくさんあります。お金や車や権力も,わたしたちを幸せにしてくれるかもしれません。でもサタンは世の中で,福音とは反対のものを提供します。そこにほんとうの幸せを見つけようとしても見つけられません。だから主はそこから離れるように教えられたのです。」
そしてリチャードソン兄弟はモルモン書を開く。「『民の心の中に宿っていた神の愛のために,地の面にはまったく争いがなかった……すべての人の中で,彼ら以上に幸せな民は確かにあり得なかった。』(4ニーファイ1:15−16)これはほんとうの幸せです。……心が世のもので満たされていれば,イエス・キリストのための場所は心の中にほとんどないでしょう。イエス・キリストで思いを満たせば,どのようなときにもわたしたちは生活の中に幸福を見いだすことができます。」
また,「キリストを確固として信じ,完全な希望の輝きを持ち,神とすべての人を愛して力強く進」む(2ニーファイ31:20)よう勧める。さらに,リチャードソン兄弟がブリガム・ヤング大学に在学中,将来の進路に悩んでいたとき,当時の学長であったジェフリー・R・ホランド長老から個人的に受けた教えとして,「熱心に探し,常に祈り,そして信じていなさい……まっすぐに歩み,……聖約を思い起こすならば,万事があなたがたの益となる」(教義と聖約90:24)と証した。
大阪市長を表敬訪問
翌11月29日,ギブソン兄弟,リチャードソン兄弟と地域会長会のスティーブンソン会長,青柳会長ほかの一行は大阪市庁舎を訪れ,平松邦夫 市長,足高将司 市議会議員,教育委員会の沼守誠也 教育次長らとの会見に臨んだ。
平松市長は,「日本国憲法には政教分離の原則がうたわれていますので……」と,市長として宗教に言及できないことを断りつつ,日本には古来,八百万の神様という考えもあるが,昨今の物質万能主義の世の中では,人と人との触れ合いの大切さ,人間性がないがしろにされているのではないか,との懸念を語った。ギブソン兄弟は,小冊子『若人の強さのために』を平松市長に渡し,若い人にしっかりした価値観を根付かせることの大切さ,そしてその価値観の多くは教会と社会とで共有できることを話した。訪問を記念して,教会からは写真集『ミッション』,タバナクル合唱団のCD,家族についてのDVDなどが贈られた。市長からは,港とともに発展してきた水都大阪を象徴する図柄を刻んだメダルが贈られた。
各地で学校を訪問
その後一行は,足高市議の案内で,真宗の教えに基づき中高一貫教育を行っている男子校の清風学園を訪問した。平岡英信理事長らと懇談し,教室での授業の様子も参観した。この学園では毎朝15分の朝礼で全員が般若心経を唱え,理事長の訓話を聞く。また生徒が勉強する目的は,自身の栄達のためではなく,世の人の役に立つためだと繰り返し教えるという。その価値観はブリガム・ヤング大学(BYU)のモットー, Enter to Learn, Go forth to Serve(入りて学び、出でて奉仕せよ,の意)に通じる。また,若人に宗教的な価値観を根付かせる苦労を,林 信幸教頭はこうたとえた。猪口 に毎日酒を注いでは捨てるようなもの,しかし続けているうちに猪口にはにおいが染みていく,と。それを聞いたリチャードソン兄弟は,毎週,福音を学び続ける日曜学校の中央会長会であり,またBYUの教授でもあることから,非常に共感した様子で拍手をした。
その後,沖縄では,与座教頭以下4人の末日聖徒の教師が勤務する沖縄尚学高校を訪問した。この高校から,2010年のBYU-H全国高校生英語スピーチコンテスト優勝者を輩出した。福岡では,福岡県立太 宰府 高校を訪問し,生徒と懇談する。また各地で青少年の家庭を訪問するなど,若人と直接対話する多くの機会を得た日本訪問であった。◆