リアホナ2011年8月号 News Box 漁師が再び生計を立てられるよう助ける教会

News Box  漁師が再び生計を立てられるよう助ける教会

──日本を訪問したバートン管理ビショップ,漁協に冷凍設備ほかを寄贈

ブルース・リンゼー,サラ・ジェーン・ウィーバー

教会は,日本の地震と津波の被害者への救援活動の手を広げ,漁協に対して人道支援を目的とした寄付を行った。

2011年6月15日,H・デビッド・バートン管理ビショップは宮城県漁協亘理 支所の運営委員長である菊地 伸悦氏に教会からの製氷機,冷凍庫,保冷トラック,およびそのほかの設備や物資の目録を贈呈した。

津波は沿岸漁業に甚大な被害を与えた。漁船は陸に打ち上げられ,倉庫は粉々になり,桟橋は破壊され,魚網は絡みついた。

漁協の90隻の漁船のうち,津波による損傷を免れたのは2隻だけである。そして,たとえ漁船を修理し,陸や海から備品の幾つかを回収したとしても,日々水揚げした魚を保存するための氷がなければ漁師たちは本来の仕事に戻ることはできない。亘理町で漁協の代表を務める菊地氏は言う。「我々には氷が必要なんです!」そのとおり,200家族以上の生活は水揚げした魚を保存するための氷にかかっている。しかし,高価な製氷装置を購入できるという望みは持てなかった。

「今回の寄贈品は3.5トンの製氷機1台,氷点下冷凍庫5台,保冷トラック1台です。そのほかの設備や物資についても,今後決定されていきます」とバートンビショップは語った。「このような寄付をさせていただくことができて光栄です。しかし,この寄付とともに,未来を築くために前進する皆さんのために,わたしたちの心と祈りもささげます。このことが少しでも皆さんの支えになれば幸いです。皆さんのご健康をお祈りします。」

バートンビショップは,教会は今後数か月にわたり,このプロジェクトのように自立を奨励するその他のプロジェクトに携わるだろうと述べた。産業用製氷機の寄贈は教会の自立の原則と一致している。何と言っても,彼らは魚の釣り方を教わる必要のない人々なのだ。

日本での地震と津波から3か月を経た6月15日,バートンビショップと,アジア北地域会長であるゲーリー・E・スティーブンソン長老は,今回の災害により荒廃した宮城県沿岸地域にある東松島の様子を視察した。ここで行われている教会の多くの救援活動を実地検分するためである。

かつては活気にあふれていた場所を歩きながら,バートンビショップは手を伸ばして,がれきの山から磁器製のカップを拾い上げる。そのカップをそっと調べる。─驚くほど無傷だ。─そして,見つけた場所にそっと戻す。

荒廃した町の瓦が 礫の中を進むミニバン。その車窓からの光景は,これまで多くの自然災害を見てきた「経験者」にさえ,他に比べようがないと思わせた。「このような光景を見たことがありますか。」そう尋ねられたバートンビショップはこう答えた。「ありません。被害の程度も範囲も他に類を見ません。300マイル(約500km)だなんて!」

瓦礫の山は,この荒涼とした風景にかつて建っていた家々とそこに住んでいた人々の生活の憂うつな名残だ。ポット,赤ちゃん用毛トンビショップが拾い上げたカップ─その一つ一つにそれぞれの物語がある。それは荒廃と復興の物語だ。「この地を歩き, 人と会う度に,二つのまったく対極にある感情を抱きます」と,スティーブンソン会長は言った。「希望と回復の感情を抱くとすぐに,悲劇と喪失の感情が混ざり込むのです。」

「完全に破壊された地域社会全体の光景は,いつまでも記憶から消えません」とバー

トンビショップは語った。

「今回の寄贈品は,教会が日曜日に受け取る2ドル,3ドル,4ドル,5ドルの献金によるものです。世界中の会員から受け取っています。その一部を人道支援基金として使うことにより,教会はこの種の支援活動を行っているのです」とバートンビショップは述べた。

「献金した会員たちがここにいて,将来に希望を見いだせなかった人々の目に喜びが表れるのを見てほしかったです。今,会員たちはこの人々の重荷を少しだけ軽くしてあげたのです。」教会の人道支援基金を通じて日本の被災者を支援することは優先事項だ,とバートンビショップは語った。「わたしたちの基金の使い道として,これ以上に有意義なものはありません。」

教会は今後,東日本大震災復興支援に当たって大きく3つの取り組みを行っていく。

第1に,教会が交通手段と滞在費の一部を提供する復興支援労働ボランティアツアーを催行し,被災地へモルモン・ヘルピングハンズのボランティアを送ること。7月18日出発便を皮切りに,8月いっぱいまで週3便,9月末までは週1便が運行される。各回の定員は40人で東京発着。申し込みの詳細はウェブサイト*注に掲載されている。

第2に,漁業支援と農業支援を通じた地場産業の自立を促すこと。今回のように漁協に必須の設備を支援するほか,農業支援については,海水による塩害を受けた農地を回復するための新技術を使うことを目指している。

第3には,教育(奨学金基金)と心のケアおよび雇用の支援を通じた自立の促進である。また,これらとは別に,2011年が教会福祉プログラム発足75周年であることを記念して,ステーク・地方部単位での「奉仕の日」を設定するよう奨励されている。「奉仕の日」として被災地に赴くモルモン・ヘルピングハンズのボランティアの姿もまた被災地で見られるだろう。

日本では,宗教団体は社会の主流ではなく,物品を寄贈することは団体名を伏せてでさえ難しい。教会の指導者は今回の寄贈の成功がきっかけとなり,日本の被災者に対する教会人道支援活動が拡大するよう願っている。スティーブンソン会長は次のように述べた。「教育,心のケアおよび雇用に対する支援,農業と漁業への支援という3つの領域は,現在行われているボランティア活動のすべてに付随しています。わたしたちはこれまで,日本の人々のために,アメリカから義援金を送り,祈りをささげましたが,わたしたちはそれだけでは満足できません。」

黄色いベストやTシャツは現地でよく知られるようになった,とスティーブンソン会長は語った。またこの夏の間中,地元の宣教師や日本各地からの教会員がこの地域にやって来て,教会は復興作業が完了するまで被災地にボランティアを送り続けるだろう,と付け加えた。◆