リアホナ2010年1月号 バランスを取って,前進する

バランスを取って,前進する

──ゲーリー・E・スティーブンソン長老ご夫妻を迎えてのディボーショナル

カンファレンス最終日,3日間の最後のプログラムとして,アジア北地域会長のスティーブンソン長老ご夫妻によるディボーショナルが行われた。

スティーブンソン長老ご夫妻は,それまでの人生の歩みを手短かに紹介する。長老はユタ州オグデンに生まれ,19歳で日本福岡伝道部にて伝道したこと。帰還後,ユタ州立大学でリサ・ジーン・ヒグリー姉妹と出会い,アイダホフォールズ神殿で結婚したこと。ユタ州ローガンに住み,4人の男の子に恵まれたこと。2004年から3年間,日本名古屋伝道部会長として奉仕したこと。2008年に中央幹部として七十人第一定員会会員に支持され,アジア北地域会長会として三たび来日したこと。長男と二男は帰還宣教師として神殿で結婚し,2人の孫に恵まれていること。三男は現在,福岡伝道部で伝道していること……。

「これはわたしたちの人生の計画ではありませんでした。ユタ州ローガンにずっと住み続けると思っていました」とリサ・ジーン・スティーブンソン姉妹は話す。ご夫妻は,カンファレンス初日にオークス長老が語ったこと──人は人生で望むことをすべて計画することはできない,主のタイミングと他人の選択の自由を受け入れつつ,主を第一とし,戒めを守り,主に求められることは何でも行うと決意することによって,どのような状況にあっても導かれる──とのテーマを再び強調した。

リサ姉妹は振り返る。「(伝道部会長,中央幹部,地域会長会に召され来日したこと)はわたしたちの計画にないものでしたけれども,とてもうまくいっています。」

「わたしたちは自分の計画を持っていても,主の計画に従います。そして主の計画の中にはキリストの教義もあります。(すなわち)信仰,悔い改め,バプテスマ,聖霊の賜物,そして今,皆さんのいるところ── 最後まで堪え忍ぶことです。」

「(人生は)計画することができません,でも,計画しなさい,とオークス長老はおっしゃいました。ただわたしたちは,キリストに頼って,何でもできるという態度で(主の計画に)従います。」

スティーブンソンご夫妻は,人生で様々な困難や予期せぬ出来事と出会った身近な人々の例を挙げた。長く独身であったが正しく前向きに生活し,40代で結婚した男性。若くして未亡人となり,3人の男の子を16年間独りで育て上げ,伝道に送り,そして新たな伴侶と巡り会った女性。また,伝道に出て1週間たたないうちに父と兄を飛行機事故で失った忠実な宣教師。「これら(の困難や予期せぬ出来事)は家族の計画ではなかった。それは(与えられた理由が)はっきり分かっていないけれども,主の計画です。わたしたちの人生には,必ず試練もあります。それは主の方法ですね。」そうした人生の変化に対処する方法を,スティーブン・E・スノー長老の説教から示した(リアホナ2009年5月号,81参照)。

ヘリコプターの奇跡

1997年9月30日,スティーブンソン長老は人生の転機となる経験をした。美しい秋の日だった。ヘリコプター操縦士の友人から電話があり,車では2時間かかる山小屋まで,わずか15分で着くヘリで行かないかと誘われたのである。スティーブンソン長老と仕事の同僚は誘いに応じて機上の人となる。秋の紅葉が眼下に広がり,ほんとうに美しかった。ところが15分がたち,着陸が近づいたころ,突然テールローター(尾部回転翼)が故障し,ヘリはバランスを崩してコントロールを失ってしまう。熟練のパイロットであった友人は,ヘリの頭から落ちると燃料タンクが爆発する,また底面から落ちると重いメインローター(主回転翼)につぶされて皆死んでしまうことを知っていた。そこでかろうじてヘリを傾け,側面を下にして,3,40メートルの高さから山腹へと機体を墜落させた。燃料が流れ出て,エンジンから炎が上がる。友人は即座にエンジンを停止させ,ヘリは爆発を免れた。機体の外へ出ると,全員が無傷,まさに奇跡であった。ユタ州ではこの数か月後に同じテールローターのトラブルで救急ヘリが墜落し,全員が死亡している。「怖かったです。わたしたちは全員,ヘリコプターの事故から生き残ることができました。そしてそのときから,生活の重要なことが何であるか気づきました。」家族が迎えに来たときスティーブンソン長老は,幼い末の息子を強く抱きしめ,リサ姉妹に心をこめてキスをしたという。スティーブンソン家のクローゼットには,そのときのヘリの破片が吊られ,墜落現場の写真が飾ってある。「(それを見て)自分の命が失われなかったことを思い出します。それで天父に従わなければならないことをもう一度思い出すのです。主がおっしゃることは何でも行う,という決意を新たにします。」

バランスを保つという原則

「その日,わたしはヘリコプターについてたくさんのことを学びました。一つはバランスという大事な原則です。」メインローターとテールローター,それらを制御する操縦桿かん,そしてヘリの重さと傾き,それら5要素のバランスが保たれなければ安全に飛行することはできない。「わたしたちは生活においてバランスを保たなければなりません。」スティーブンソンご夫妻は,ヘリの場合と同様に,人生の中でバランスが大切な5つの事柄を挙げた。

第1に,健康。そのためには,バランスの取れた食生活・運動・レクリエーションや趣味が大切となる。

第2に,情緒的強さ。「わたしたちは強くなければなりません。わたしは世の中に,何でもかかってきなさい,と言いたい。なぜなら御父がわたしを祝福してくださると分かっているからです。」そのために大切なことは,考え方,物事に対する姿勢──「幸せでいてください。もしも皆さんが笑顔でいれば,大変なことでも簡単に行うことができます。」ストレスを取り除く,あるいはストレスに対する見方を変えること。感情をコントロールし,いつも柔和であること。そして自信。「年齢は関係ありません。皆さんは常に天の御父の特別な息子であり娘です。それが,困難があっても克服できるという自信につながります。」

第3に教育・職業。「常に教育を受けること(生涯教育)です。自分で学ぶこと,本を読むこと……時事問題を分かることは大事です。そして職業能力を改善することは大切です。」

「神の勧告に聞き従うならば,学識のあることはよいことである。」(2ニーファイ9:29)

第4に,社交性。「身だしなみは,わたしたちの社交性を高めてくれます。」また,「友達を見つけてデートしてください。お互いに助け合い学び合ってください。」そして,親しみやすい性格。「シャイであったとしても,笑顔を見せてこんにちはと言うことはそれほど大変なことではありません。わたしたちは子供のように,フレンドリーで親しみやすくならなければなりません。それによって周りの人たちがみな幸せになります。」

そして第5に,霊性。そのバランスを取るために大切なことは──教会での奉仕。「皆さんが仕えている人よりも実際は自分たちの方が祝福を受けます。」神殿参入。「わたしたちが参入できる神殿を与えられているのは非常に祝福だと思われませんか?」聖文学習。

「毎日定期的に,5分でも聖典を読んだら,聖霊の御霊を感じます。」兄弟愛。「自分がされたいように人々に接してください。」祈り。「毎朝毎晩祈りましょう。一日中,目を開けたまま祈ってもいいのです。」そして熟考と瞑想。「人生は時に非常に多忙になり,わたしたちは,御父がわたしたちの霊にお話をされる静かな時間を取れないことがあります。どうぞ熟考し瞑想する時間を取ってください。」

これら5つの事柄のバランスが取れているとき,オークス長老の勧告のとおり,(ヘリが飛行するように)わたしたちは前進することができる,とスティーブンソンご夫妻は強調する。

会場では用紙が配られて,自分の中でこれら5つのカテゴリー間のバランスが取れているか,それぞれが自己評価してみるよう勧められた。「完全なバランスは円になります。今はそうでなくても,最後まで堪え忍んで,完全な円になるように,一緒に努力していただきたいと思います。」

終わりにリサ姉妹はこう述べる。「わたしは生活にあってバランスを保つことが非常に大切であることを証します。また,わたしたちは柔軟でなければなりません。主の計画に喜んで従う必要があります。まったく計画なしにただ待っていてはいけませんが,わたしたちの生活の計画が変わったとしても,主がわたしたちに望まれることを喜んで行う必要があります。」

スティーブンソン会長も,涙ながらの証で締めくくった。「わたしは心から特別な証をします。イエスはキリストであり,救い主です。その聖なるキリストの御名によって証し,申し上げます,アーメン。」◆