リアホナ2010年1月号 「それでも,前進し続ける」

「それでも,前進し続ける」

──ダリン・H・オークス長老ご夫妻を迎えてのディボーショナル

全日本シングルアダルトカンファレンスの初日,オープニングセレモニーに続いてディボーショナル(霊的な集会)が開かれ,十二使徒定員会のダリン・H・オークス長老と伴侶のクリステン・M・オークス姉妹が登壇した。

基礎的なこと──純潔と安息日

オークス長老は,人生の基礎となる二つの事柄を挙げた。第一に,わたしたちを愛してくださる天の御父がおられること。第二に,愛する子供たちへ人生の目的を教え,天父のもとへ戻る方法を教えるための救いの計画が用意されたこと。神の子供たちを,永遠の命の過程へ進むにふさわしくするため,戒めが与えられた,とオークス長老は説く。(教義と聖約130:20-21参照)

そしてオークス長老は,特に教会の独身会員にとって重要で基本的な戒めとして,純潔の律法と安息日の二つを強調した。

「わたしたちの持つ,肉体を創造する力は,神がその子供たちに賜った最も崇高な力です。」結婚のきずな以外でその力を使うことは非常に罪深いことであり,男女のふさわしくない性的な行為は,殺人の次に忌まわしい(アルマ39:5参照),とオークス長老は述べる。「神が与えてくださった創造の力を乱用するときには,その責任を負わなければなりません。」

またオークス長老は,安息日を守り,聖餐を取るときに,絶えず御霊が伴侶となるとの約束を思い起こさせた。「これは,結婚している人以上に,独身の人にとって重要なことです。結婚している人は,自分が弱くなると伴侶がいます。自分を高め,励まし,道から離れるときには助けてくれます。しかし独身でいるとき,皆さんはサタンによる誘惑を受けやすくなります。ですから,毎週日曜日に聖餐を取れるよう,非常に注意を払う必要があります。そうすることでいつも御霊が得られ,聖霊が皆さんの伴侶となるのです。」

「それでも,前進し続ける」

クリステン姉妹は,天の御父がわたしたちを愛しておられることを証する。しかし,だれもが経験する人生の悲しみや困難が,神の愛を忘れさせ,わたしたちを霊的に後退させることがある,とも言う。「重要なことは,わたしたちが前進し続けることです。……もし止まってしまったら,物理的な法則と同様に,それを再び動かすためには大きなエネルギーが必要になります。遅くてもゆっくりでも動き続けなければなりません。」

クリステン姉妹は,ある開拓者の話と,オークス長老の経験を紹介する。

ヘンリー・クレークは若い妻と赤ん坊の息子を連れて平原を旅していた。しかし妻と息子はコレラに感染し,妻を埋葬したその日の夜,息子も腕の中で息を引き取った。彼は旅の一団を離れて妻の墓へ行き,息子を妻の腕に抱かせて埋葬する。再び5マイル離れた幌馬車隊に戻り,日記にたった二言だけつづった。「それでも,前進し続ける」と。

オークス長老も同様に,妻を亡くすという経験をした。「彼は毎晩暗い部屋へ帰って来て,話をする人もなく,料理の香りを感じることもありませんでした。」オークス長老は悲しみに沈み,毎晩家に帰ると,涙を流し,今までどれほど幸福な結婚生活であったかを日記に書き留めた。妻のジューンが亡くなった1年後に,妻についての本を著した。そのころ,神殿へ行き,そこで一つの声を聞く。「どうぞ,あなたの生活を取り戻してください」と。そのときオークス長老は,喪に服するのは終わったと感じた。寂しくとも,前進し,自分の生活を取り戻す必要があったのである。

「兄弟姉妹の皆さん,これがわたしのメッセージです。どうぞ前進して,自分の生活を立て直してください」とクリステン姉妹は呼びかける。「わたしは何度も涙を流しながら眠ることがありました。独身であることは,結婚しているのと状況が多少違います。教会の集会に集うときには,だれか一緒に座ってくれないかと探していたときもあります。……わたしの友人には皆,子供がいるのに,わたしにだけいませんでした。そのようなときにはいつも祈りました。わたしが続けて前進することができるように,力が与えられるように神様に助けを求めました。」

人の生活に祝福を与える

競争が激しく,だれもが世間的な成功を目指しているような現代社会にあって,わたしたちはほかの人の生活に影響と祝福を与えられる存在として生まれてきた,とクリステン姉妹は語る。「わたしたちが笑顔を見せること,また,神殿で死者のために身代わりのバプテスマを受けることなどで違いが生み出さされるのです。」

そしてアフリカのある若い女性の取り組みを紹介する。どのようにして周囲の人々を祝福するかを考えたとき,彼女にはまったくお金がなかったので,毎日,すべての人に「ありがとう」と言うことにした。バスに乗るときも,仕事へ行くときも,あらゆる場所でいつも感謝の言葉を伝えるのが彼女の計画だった。「彼女が語るには,月末になると,以前の自分とはまったく違う人物になっているとのことでした。周囲の人を祝福するという彼女の取り組みは,周囲の人を変えるのではなく,彼女自身の人生が変わるというプロジェクトへと変化していきました。人生の中の出来事にどのように反応するかということで,わたしたちは悲しみか幸せかを決めることができます。幸福というのは選択なのです。」

南アフリカの会員は決して物質的に恵まれてはいないものの,什分の一を完納し,霊的に満たされて喜びを感じ,以前よりも幸福になったと感じているという。

主のタイミングを信頼する

オークス長老は再び登壇し,「主のタイミング」というテーマを語った。

「わたしたちが人生で下す第一の重要な決断は,正しいことをするということです。二番目は正しいことを正しいときに行うということです。正しいことを適切でないときに行う人は,心の平安を感じることができませんし,その働きは効果的ではありません。」

「福音の第一の原則は,イエス・キリストを信じる信仰です。信仰には信頼するという意味があります。神の御心を信頼し,神が行われる方法を信頼します。どうぞ,神様のタイムテーブル(時刻表)を信頼してください。わたしたちの時刻表を父なる神に押しつけることはできません。……もし,神がわたしたちの福利のことを心から案じていらっしゃると思うならば,神が最良と思われてなされている計画に対して従うべきではないでしょうか。」

大はイエス・キリストの再臨から,小は個人の人生における出来事まで,わたしたちは主のタイミングを信頼し,御父の御心が,主の時に従ってなされますようにと言う必要がある,とオークス長老は語った。「主の教会において,『いつ』奉仕をするかということは大切です。」イエス・キリストは十二使徒を伝道に送るに当たってこう命じられた。「異邦人の道に行くな。……むしろ,イスラエルの家の失われた羊のところに行け。」(マタイ10:5-6)その後,主が定められた適切な時が訪れたとき,使徒ペテロへの啓示により,この指示は変えられた(使徒10章参照)。「わたしたちは主が定められた方法で備えます」とオークス長老は言う。「自分自身を準備して,主のタイミングで行動できるようにするのです。ですからわたしたちは,今,自分に割り当てられていることに集中し,今日行うよう求められていることに焦点を当てなければなりません。」

人生で何が起ころうとも

この人生で起こる出来事は,主の御心とタイミングに影響されるだけでなく,人々の選択の自由にも影響される。人生にはコントロールできない要素もある,とオークス長老は自身の人生を振り返って語る。

オークス長老は主を愛していたので,19歳になったら専任宣教師になろうと思っていた。しかし予期せぬことに,17歳のとき朝鮮戦争が勃発し,ユタ州軍に所属していたオークス長老は戦場に配属され伝道に行くことはできなくなった。

後年,オークス長老はブリガム・ヤング大学の学長を9年間務め,解任後,48歳で合衆国最高裁判事の職に選ばれた。そこで20年間判事として働き,退官後,ジューン姉妹とともに夫婦宣教師として伝道するという計画を立てた。しかしオークス長老は,53歳で十二使徒に召され,65歳のときジューン姉妹に先立たれる。「わたしたちは人生で望むことすべてを計画することはできません。結婚のタイミングというものはその最も良い例です。それはわたしたちの人生の中でとても重要なことですが,わたしたちは結婚というものを明確に計画することはできません。」しかし,わたしたちが確実にコントロールできることがある。それはいかなるときも正しいことを行うという決断である。

「わたしは主を第一にする,そしてその戒めを守ると約束しました。その決意が,たとえコントロールできないことが起きたとしても,わたしを導いてくれたのです。」オークス長老は,かつての自分と同様に,主を第一にすることを決意し,主の戒めを守り,主の僕がわたしたちに求めることは何でも行うように,と勧める。「そうするなら,皆さんの歩みは,永遠の道筋に導かれます。たとえ結婚しようとしまいと,伴侶が亡くなっていてもそうでなくても,ビショップや扶助協会の会長に召されていようといまいと,明日,死んだとしても問題ではありません。」

「自分の人生のすべての出来事を計画しようとしないでください」とオークス長老は続ける。「主のタイミングを受け入れ,そして,ほかの人々の選択の自由を受け入れてください。それが結婚や職業についての重要なことであってもです。もちろん,計画は立ててください。その計画を自分の決意にしっかりと書き込むようにしてください。そうすることで,たとえ何が起きても皆さんは導かれるのです。永遠の原則に皆さんの碇をつけてください。どのような状況でも,ほかの人の行動に左右されることなく,皆さんの決意を守ってください。」

今,動き出そう

ただ単に結婚相手が現れるのを待つのはやめ,立ち止まらず前進するように,とオークス長老は呼びかける。「自分自身を人生に備えてください。教育を受け,経験を積み,そして,計画をするのです。幸福が自分に向かってやって来るとは思わないでください。どうぞ,奉仕の中で幸福を学び,幸福を求めてください。自分の人生を作り上げてください。そして,主を信頼してください。」

オークス長老はジェームズ・E・ファウスト管長の言葉を引用する。「結婚してからでなければ人生は始まらないと思っているとしたら,その女性たちは間違っています。女性たちは自分自身の価値を認識する必要がありますし,多くの役割を果たし,自分自身の重要性を感じる必要があります。結婚していたとしても,独身であったとしても,必要とされなければなりません。自分が何かを提供できると思わなくてはなりません。」

またゴードン・B・ヒンクレー大管長の勧告を引用する。「重荷を軽くしてあげられる人がわたしたちの周りにはたくさんいます。家のない人,空腹の人,年老いた人,ハンディキャップ(障碍)を持つ人,薬物を使っている若者,病気の人,家に閉じこもっている人,優しい言葉を求めている人がたくさんいます。もし,あなたがしなければだれがするのでしょうか。心配ということへの最良の特効薬は働くことです。落胆の最も良い薬は奉仕をすることです。そして,疲れ果てている心を癒してくれるのはだれかを助けることです。もっと疲れている人を助けることなのです。

皆さんにはほかの人の生活を高める才能があります。もし皆さんが自分自身を捨てて奉仕するならば,慰めと力を得ます。もし,皆さんがほかの人を助けるならば,皆さんは自分の問題を忘れるようになります。もし,落胆している人の重荷を引き上げるならば,皆さんは自分の重荷を軽くすることができます。」

最後にオークス長老は,ビショップを除くすべての責任に独身会員を召すことができると示唆し,彼らを管理する指導者に勧告した。「独身会員は教会の中で最も重要な人材です。多くの独身会員がとても効果的に教えたり,指導したり,教会のすべての会員のために奉仕をしたりできます。多くの場合,子供がいる既婚者よりも奉仕の業によく働けるときがあります。そして,彼らは奉仕の機会があれば祝福されるのです。」

オークス長老は使徒として証を述べ,この集会を締めくくった。「兄弟姉妹の皆さん,わたしは皆さんを愛しています。御父と御子について証します。わたしたちは預言者によって導かれています。天のお父様の計画について証します。この教会は御父の真の教会なのです。完全な福音があり,神権の力がある教会です。これらのことをイエス・キリストの御名によって証し,愛を伝えます。」◆