リアホナ2010年12月号 同点3位が2人,初の4人入賞

同点3位が2人,初の4人入賞

── ブリガム・ヤング大学ハワイ校第12回 全国高校生英語スピーチコンテスト本選

11月6日(土)に東京の吉祥寺の教会堂を会場として,第12回全国高校生英語スピーチコンテスト(後援:文部科学省/駐日アメリカ大使館/末日聖徒イエス・キリスト教会)が開催された。来賓に,末松義規衆議院議員(内閣府副大臣),遠藤利明衆議院議員(元文部科学副大臣),佐藤勝彦氏(フォード・ジャパン特別顧問)を迎える中,全国各地の予選大会で選出された15人の高校生が「家族」をテーマに4分間のスピーチを披露した。

今年度の優勝者は,沖縄尚学高等学校2年の古堅将平さん。「家族の大切さ」と題したスピーチでは,社会の中にあって翻弄される家族の存在意義について,自分自身の体験を交えながら提言を行った。父親を亡くしてから母親との二人暮らしの生活。そして,遠距離通学を避けて高校入学後に始めた独り暮らし。母親との価値観の違いから生まれる葛藤を語りながら,希薄になる家族関係を解決する糸口を与えてくれた。

準優勝は「わたしの家族は小さな世界」というテーマで語った北海道地区代表,北星学園女子高等学校2年の荒生 智美 さん。全国大会へ2年連続の出場を果たし,今年は見事に準優勝に輝いた。第3位は同点のため2人が受賞した。「わたしの家族・伝統の継承者としての存在」のテーマでスピーチを行った新潟県立柏崎翔洋中等教育学校5年の池浦隆真 さんと,「ほんとうの家族」というテーマでスピーチを披露した京都両洋高等学校1年の福井章夏さんが受賞した。12回の大会を通じて,入賞者が4人であったこと,また,男子生徒が2人入賞したのは初めてのことだった。

優勝した古堅将平さんには,副賞として,ブリガム・ヤング大学ハワイ校のサマースクールへの招待が贈られる。

また,入賞者4人については,各学校へ実行委員が赴き,改めて表彰が行われる。

第13回全国大会は2011年11月12日(土)に大阪での開催が予定されている。詳細はホームページ(http://www.byuh.jp/)で公開予定。

以下に,古堅将平さんの優勝スピーチ全文の日本語訳を掲載する。

家族の大切さ

古堅将平 沖縄尚学高等学校2年

日々の報道を通して,家族間のつながりが希薄になっていると感じます。家族の間での虐待や殺し合いなどのニュースを見て,とてもショックでした。わたしたちは家族とのつながりに感謝して,このような社会の傾向を変えなければなりません。わたしは父の死,そして,母とのつながりを失いかけた経験から,家族のきずなの大切さに気づきました。

わたしの父親は中学3年のときに事故で亡くなりました。そして,高校は実家から遠かったので,学校の近くのアパートで独り暮らしを始めました。わたしの母は,懸命に仕事をしながら,わたしのことをサポートしてくれていますが,母は少し心配性で,様子を見るためにわざわざ実家から2時間もかけてわたしのアパートまで来ます。最初は驚きました。しかし,回数を重ねるにつれ,だんだんとうっとうしく感じてきて,母が話しかけてもそっけない態度ばかり執っていました。しかし,ほとんど毎日アパートを訪れて来る母に対して,ついに「何でそんな頻繁に来るんだ?」と聞くと,母は「親だから当たり前のことだろう!」と言い,わたしを怒りました。

それからしばらく母はわたしのアパートに訪ねて来なくなりました。毎日のようにかかってきた電話もすっかり来なくなりました。それをよいことにわたしは友達と夜に遊びに出かけ,母からの仕送りもほんの数日で使い果たす有様でした。夏休みも終わりに差しかかったころ,ついに母がアパートを訪ねて来ました。久しぶりに見た母親の顔に安心しました。

「調子はどうね?」とか,「晩ごはん作ったから食べて」と母は言ってくれました。何だかやけに優しげな母の振る舞いに不安を感じました。「優しい」というよりも,どこか「弱々しく」見えたからです。その理由は,ちょっと考えると分かることでした。この夏休み中,母は実家に独り。仕事から帰ってもだれ一人として話相手がいない,そんな状況で母は過ごしてきたのです。それに気がついたとき,わたしは罪悪感に襲われました。わたしが学校に行けるのも,学校から帰って来た後においしいご飯が食べられるのも母のおかげです。また,わたしにかける電話が毎日の楽しみだったということを母から聞き,わたし自身が母の支えになっていることに気づかされました。また,母の励ましがわたしに力を与えてくれることも知りました。それからは,母への対応も優しくできるようになりました。今では,わたしは母と二人暮らしです。母は通勤に片道2時間かかっていますが,今では,わたしたち家族のきずなはさらに固く結ばれています。

「失ってから気づく大切さ」という言葉がありますが,ほんとうにそのとおりだと思います。父が亡くなったときには,父とのきずなを強くするのは手遅れでした。しかし,今のわたしは,幸運なことに母とのつながりのかけがえのなさを知っていて,これから母との時間を大切に過ごしていこうと思っています。このような家族とのつながりの大切さに気づくことは,社会で問題になっている家族のつながりの希薄化の解決の糸口になるでしょう。皆さん,わたしたちが愛する人々,そしてわたしたちのことを愛してくれる人々との時間を大切に過ごしているか自分自身に尋ねてみてください。遅くならない前に。◆