リアホナ2009年1月号 地に足をつけて福音を生きる

地に足をつけて福音を生きる

──新年度の登録が始まったLDSファミリーサービスの「リソースクラス」

あなたは子供を保育園に連れて来たとしよう。出勤時間が迫っているので少々焦っている。ところが5歳の娘は保育園に行きたくないとだだをこね,車から降りようとしない。

あなたならどうするだろうか?

大抵の人は,「わがまま言わないの!」と叱ったり,せき立てて無理にでも行かせようとするのではないだろうか。──「でも実は,子供が問題を起こすときこそ,子供と心を通わせ,きずなを深めるチャンスなんです」とLDSファミリーサービス日本事務局の西原里志ディレクターは語る。こうしたとき,LDSファミリーサービスが提供する「リソースクラス」で学んだ原則が生きてくる。「子育て支援」のクラスでは,「『こころのコーチ』の5ステップ」というスキル(技術)を学ぶ。それがどういうものなのか詳しく説明するには紙幅が足りないが,子供が心の平静を失っているとき,心を癒いやしてあげ,心の成長を助けてあげることは,親として最も満足を味わえる瞬間の一つだろう。

一昨年から始まった「リソースクラス」を通して,今,日本のあちこちでそんな喜びの波紋が広がりつつある。

実行することで家庭が変わる

町田ステーク八王子ワードの黒木静香姉妹は,リソースクラスを受講して生活に起きた変化をこう記している。

「『だったらわたしは部屋中の電気をチェックして消すね』そういって長女は紙と鉛筆を持って家の中を歩き始めました。これはリソースクラスの第8セッションで『責任ある行動を教える』を学んだ日から始まりました。娘は電気をつけっぱなしのことがよくあり,度々注意をされていました。以前家族で見たドキュメンタリー映画で地球温暖化によって北極の白熊が苦しんでいることを思い出させ,彼女にその責任の決定と権限を与えました。それまで,お手伝いをお願いすること(責任)があっても,権限を与えたことはありませんでした。それからの娘の行動と態度は以前とは変わりました。自分の行いに誇らしげな様子はわたしたちにとってもうれしいことでした。

良い母になろうと,『~でなくては,~しなくては,(I must)』の病にかかると,子供たちにも『~すべき,~しなさい(You must)』という態度になってしまいがちです。それは子供を親から遠ざけてしまう大きな要因になりえます。わたしは子供と心を通わせるために,第4セッションで学んだ,アイ・ステートメントを大いに活用するようにも心がけています。『あなた』で伝えていた言葉をたった一言『わたし』に代えて気持ちを伝えるだけで,ほんとうに同じ子供なのか,と思わせるような反応が返ってきます。わたしはこれらを通して,良い母より,幸せな母になろうと決意しました。

このリソースクラスは受身の講義ではなく,ディスカッションを通して,より具体的な例を用いて,それぞれの思いをぶつけ合い,お互いに刺激し合えたことがとても良かったと思います。自分の子供のことだけでなく,同じワードに集う子供たちにも心を向ける良い機会になったと思います。そのことにより,福音の中で子育てをしていくうえで,共通の思いを持ち,他を理解し合い,そして助け合う心が芽生えたような気がします。涙でイエスの足をぬらし,髪でぬぐい,香油を塗った女性(ルカ7:44-48)を主が褒 められたように,わたしも子供が行おこなったことや言葉を具体的に褒め,その行いで自分が幸せを感じられ,自分の価値を高められるように,主の模範に従って生きたいと思います。」

ユニークなクラス運営

リソースクラスのレッスンは,日曜学校などのレッスンに慣れた目で見るとずいぶん斬新に映る。まず①開会行事と参加者による短い証,そして②教師によるレッスンが始まるのだが,これはその日に学ぶ原則を説明するだけで10分ほどで終わってしまう。③教師の提示した原則に関して自分がこれまでどういう生活をしてきたかを分かち合う(シェアリング),④またこれからの生活にどう生かせるか話し合う(ディスカッション)。次に,学んだ原則を生活の中で効果的に実践するための⑤技術を練習(スキルトレーニング)する。例えば下の囲み記事にある「アイ・ステートメント」という技術も,日常の場でとっさに使えるようになるにはそれなりの練習を積む必要がある。それが終わると,⑥クラスの一部としてリフレッシュメントを頂く。「食べているときに人は本音が出ますから。教会員同士が教会を離れて交流する本音の会話の機会です。ご主人が出かけると,一日赤ちゃんとしか話す機会がないといったお母さんにはいいストレス解消になるでしょう(西原兄弟)。」そして,⑦閉会行事。

意見を出しやすく,本音で語りやすくするために,普段着で来ることにしているクラスもある。沖縄では,いわゆる「かりゆしウェア」でレッスンが行われるところもある。またあえて机やいすを使わず,床で車座になって開かれるクラスもある。教会ではなく指導者の家庭で開かれるクラス,子供たちを連れて来て開かれるクラスもある。「後ろの方で遊んでいますけれど,ときに子供たちは生きた教材になってくれます。またクラスでは人を指名しません。準備ができたらいつでも手を挙げてくださいと伝えています。心の準備ができていない人を当てると,優等生の(建前の)答えになりがちなんです。」さらに西原ディレクターはこう解説する。「通常の教会のレッスンでは,理想的なあり方を学びます。すると,自分の現状と引き比べてがっかりしてしまうんですね。でもリソースクラスでは,皆,横並びになる必要はありません。自分のいるところから,自分のできることをやって

いけばいいんです。」

中央初等協会会長のチェリル・C・ラント姉妹はこう話した。「いつも心に留めているのですが,わたしたちが永遠の家族について話すとき,それは完全な家族について話しているのではなく,最終的に完全になることを目指して,天の御父のもとへ戻る努力をしている家族について話しているということです。……完全な家族とは試練がまったくない家族ではなく,試練があっても,天の御父の助けを受けながら克服しようと努力している家族のことです。」*1

またトーマス・S・モンソン大管長もこう語る。「外見的には様々な家族があります。父親,母親,兄弟,姉妹がいる家庭もあれば,独りの親と子供たちから成る家族もあります。そして,たった一人だけの家族もあるかもしれません。

それぞれの家族の形態がどのようであれ,……わたしたちの前に示された指針に添って生活するなら,わたしたちはさらに主に近づき,家庭をさらに天国のようにすることができます。」*2

自分を飾ったり背伸びしたりする必要はなく,現在立っている実際の地点から天国のような家庭を目指すのがリソースクラスである。西原ディレクターは続ける。「ですから,このクラスでは結論は出さないんです。子育てというのは,10人いたら10通りあってわたしはいいと思います。それぞれお父さんお母さんが持っているものも違いますし,同じ家庭に数人子供がいても全部違います。長男のときに使った方法が二男のときに使えるとは限りません。そのときの状況に合わせて原則を自分の子育てに応用していく,そのためにはいろんな原則とスキルを知っておく必要があるわけですね。このリソースクラスはそういう原則とスキルを提供する場です。学んだ原則をどのように応用するかはそれぞれ違っていていいんです。学んだことを取捨選択して,子育ての中で今,使うか使わないか決めるのは個人の判断です。」

失敗から学ぶ

「成功体験はもちろんその人に自信を与えます。だけど周りの人にも(分かち合って)役立つのは成功体験ではなく失敗体験の方かもしれません。同時にその失敗を,福音を使ってどう克服したかを聞けたら最高だと思います。失敗しちゃいけないとほとんどの人は思っているかもしれませんけど,実はイエス様が贖あがない主としてわたしたちに与えられているということは,神様はもう人が失敗するのを御存じだったのです。だから失敗したときにどう対処するかがとても大切なことなのです。そういうときに,例えばいろんな方々の失敗体験や成功体験,また原則とスキルを知っていたら,その失敗を,自分たちにいちばん合った形で成功体験に結び付けていくことができると思います。」──冒頭の例のように大人も子供も,問題があるときこそ,そこに成長のチャンスもあるのである。◆

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