リアホナ2009年2月号 藤田姉妹エッセイ 神の愛に満たされた人は,目を全世界に向ける

藤田姉妹エッセイ 神の愛に満たされた人は,目を全世界に向ける

現在,世界では3秒に1人,つまり1時間で1,200人,1日に3万人近い子供が貧困のために命を落としています。また,世界の人口の20%つまり5人に1人は極度の貧困状態にいます。数年前に行ったフィリピンのマニラでたくさんのストリートチルドレンを見かけました。はだしで汚れた服を着て,食堂で食べ物をもらって歩いていました。地元の人が「彼らの将来は刑務所か墓場しかない(つまり,空腹のため盗みを働いて刑務所に入れられるか,病気や事故で命を落とすか)」と言っていました。彼らもわたしたちと同じ,たくさんの可能性を持った神様の貴重な子供です。しかし,その可能性を伸ばす機会はおろか,十分に食べるものすらないのです。

一方,日本では毎年世界の食糧援助の2倍にあたる食糧が廃棄されています。※1 地球上の神様の子供の多くが十分に食べられず,貧困で命を落としていく中,一部の豊かな国にいる子供たちがたくさんの食糧を無駄にしている,という状況なのです。神様はそれをご覧になってどう思われるでしょうか。たくさん持っている子供たちに何を求められるでしょうか。ジョセフ・スミスは「神の愛に満たされた人は,祝福が家族だけに留まることに満足できず,目を全世界に向け,広く全人類が祝福を受けることを望む」と言っています。わたしたちに何ができるでしょうか。

昨年,名古屋のある女子大で非常勤講師として担当していた人権の授業では,貧困の中で生きる子供たちのビデオを見せ,世界の貧困問題を説明しました。涙を浮かべる学生もいて,「何かしたいけど,問題が大きすぎて無力感を感じる」という意見がたくさんありました。そこで「小さなことから大きなことが起きる」(教義と聖約64:33参照)という聖句のメッセージを交えて,ヒトデの話※2を紹介し,自分のできることから始めることの大切さを伝えました。わたしたちは不必要な物に使っているお金を世界で困っている人に回すことができます。例えば,100円で買えるものとして,「水4~5リットルを浄化できる浄化剤50錠」「経口補水塩(下痢による脱水症状を防ぐもの※3)14袋」「ポリオ経口ワクチン7回分」などがあります。

近年,教会からは多くの夫婦宣教師が貧しい国に福祉宣教師として召されています。それは人々が福音を聞く備えをするために,まず彼らが基本的な生活を営めるよう助ける,という趣旨です。わたしたちも目を全世界に向け,教会の人道援助プログラムなどの信頼できるルートを通して持てるものを必要としている人に届けることで,小さくとも良い変化をもたらすことができるのです。

イギリスには強い「寄付文化」があります。全国にさまざまな慈善団体によるチャリティーショップがあり,お年寄り,学生,主婦などがすべてボランティアで働き,また人々はそこにお金や不要になったものを寄付しています。寄付金を集めるテレビ番組に寄せられる寄付の額も日本の約15倍です。個人の生活は質素ですが,慈善活動への寄付や協力は惜しまない文化がある国で,わたしたちも学ぶべき点があると思います。

「世にあって世のものとならず」という聖句には「世にあって貢献してください」という意味もあると言われています。目標を立てて,「神のために」「世にあって」奉仕するために才能を伸ばす努力をするとき,難しいと思われることでも神様は道を開いてくださるのです。◆

※1──世界の食糧援助の総量は年間1,131万トン。日本の一般家庭と食品産業から出る食品廃棄物の総量は年間2,300万トン

※2── 老人が浜辺で何かを拾っては海に投げ込んでいました。若者が老人に近づき,それがヒトデであることに気づき,こう尋ねました。「一体どうしてヒトデを海に投げ込んでいるのですか?」「ヒトデは,太陽が高く上って引き潮になったときに浜辺に残っていると,死んじゃうからさ」と老人は答えました。「そう言われても,浜辺は果てしなく続いているし,ヒトデも無数にいますよ。まさか,そんなことで何かが変わるとほんとうに思っているのですか。」賢い老人は,ヒトデをまた拾って思いにふけり,波に投げ返しながらきっぱりと言いました。「こいつにとっては大きく違うさ。」

※3──貧しい国では下痢による脱水症状で命を落とす子供が非常に多い