末日聖徒イエスキリスト教会(モルモン教)リアホナ2008年9月号 廃棄される除籍謄本──御存じですか? 戸籍法

廃棄される除籍謄本──御存じですか? 戸籍法

日本最初の戸籍法は明治5年に施行された。その記録は家族歴史の作成,先祖の救いの儀式,個人がこの時代に存在した証という観点からも貴重な資料といえる。戸籍謄本は戸籍法に基づいて市区町村役場で作成,管理されている。そして戸籍謄本に記載されていた個人が転籍,結婚,死亡などで全員いなくなったり,法改正によって新たに戸籍簿がつくられると,除籍された戸籍は除籍簿(除籍謄本を請求する際の原本)と呼ばれるものになる。現行の戸籍法は昭和23年に施行されたので,それ以前の戸籍は除籍簿となっていることになる。

除籍簿は,教会員が家族歴史を探究するために不可欠な,家族と個人の結びつきを証明する唯一の公的資料である。しかし,この貴重な先祖の記録が,関係する本人も知らないうちに毎年廃棄処分されていることはあまり知られていない。

戸籍法施行規則第五条4項では,除籍簿の保存期間は80年と規定されており,その期間を過ぎた除籍謄本は請求しても発行されない。現在,全国各地では市町村合併などにより,役所の統合が実施されている。それに伴い,除籍簿の廃棄処分も積極的に進められている。80年という保存期間からすれば,平成20年の時点で,昭和初期の除籍簿が処分されている可能性は高い。

●除籍簿の保存期間の伸長を求める意見書が一部の国会議員によって提出されたり,過去に衆議院の法務委員会で論じられたこともある。「長寿社会における対応,国民の財産権の保護の観点から,……除籍簿の保存期間を現行の八十年から百年に延長をすべき」との意見も出ているが,法改正には至っていない。また,収納書庫の容量の問題解決のために,紙で保存されていた記録の電子データ化を望む声も専門家の中では上がっているが,積極的な対応は行われていない。日本の一部に見られる同和問題,すなわち先祖の出自によって人を社会的に差別する習慣を撤廃するため,むしろ積極的に廃棄を進めよとの意見もある。

●例えば,北海道に住む教会員で明治時代に開拓のために本州から移住した先祖を持つ人がいるとする。明治時代までは除籍簿によって調べることができる。それ以前は,菩提寺の過去帳や墓石によって探究することができる。先祖の過去帳や墓石を調べるには,除籍簿に記載されている先祖の出身地を確認しなければならない。しかし80年を経過した除籍簿は廃棄されていくため,最も古い除籍簿の本籍地が北海道と記載されている場合が多くなり,本州の先祖の出身地をたどるのは年々困難になっていく。

●わたしたちが知らないうちに,わたしたちの財産ともいうべき家族歴史が自動的に廃棄され続けている。数年後に自分のルーツを調べようと思ったとしても,自分の先祖がだれなのか,自分の先祖はどこから来たのかまったく分からない状況になっているかもしれないのである。このまま現行の戸籍法が継続すれば,自分自身の記録も数世代後には抹消されてしまい,子孫の記憶にすら残らない可能性もある。今,調べなければ価値ある記録が失われてしまうかもしれない。まずは先祖の記録を取り寄せることだけでも早めに行うべきであろう。◆