リアホナ2008年12月号 News Box 日本社会に確固たる地歩を占める

News Box 日本社会に確固たる地歩を占める

──10周年の節目を迎えたブリガム・ヤング大学ハワイ校全国高校生英語スピーチコンテスト

──10周年の節目を迎えたブリガム・ヤング大学ハワイ校全国高校生英語スピーチコンテスト

文部科学省の後援を受け,第10回全国高校生英語スピーチコンテストが11月8日(土)に東京・吉祥寺の教会堂で開催された。全国の各地区予選大会で選出された13名の高校生が一堂に会し,「家族」をテーマにして4分間のスピーチを披露した。

●予選大会の培ってきたもの

●予選大会の培ってきたもの

全国大会は今年で10年目という記念すべき節目を迎えたが,その大会を支えてきたのは,各地区の予選大会で運営スタッフとして奮闘する兄弟姉妹たちだ。全国大会とは異なり,予選大会では学校への宣伝,地元関係団体からの後援,出場者の選定など多くの業務が集中する。また,コンテストは各地区の広報ディレクターが中心となって実行委員会が組織されており,コンテストそのものよりも,地域社会との連携が強調されてきた。そのため,コンテストを介して教会が地域社会に奉仕することを常に念頭に置いて開催してきた。予選大会は教会堂を使用して行われる地区もあれば,公的な場所を会場として実施している地区もある。その判断はそれぞれのステークや地方部の広報的な視点に基づいて選択されている。また,一般企業や公共団体から後援を受けながら実施しているのも大きな特徴になっており,予選大会や全国大会でもコンテストを利用しての伝道活動は行われていない。教会員がボランティアで運営しながらも,学校やメディアから多大な信頼を得た予選大会へと育ってきた理由の一つは,地元スタッフの熱意と将来への確固としたビジョンによる部分が大きい。

●独自の審査基準

●独自の審査基準

過去の大会での10人の優勝者のうち,9人は教会員ではない。また,教会の青少年の出場者は少ないが,コンテストは教会の外部へと門戸を広げた大会として定着してきている。文部科学省が後援することからも,公平性が保たれ,審査基準や出場資格も毎年見直され,反省と評価が繰り返し行われている。他団体のスピーチコンテストとのもう一つの違いは,「英語の発音だけが重視されているわけではない」ということだ。海外での生活経験やインターナショナルスクールの在籍なども出場資格で制限されており,流暢な英語はそれほど重要視されていない。英語を学ぶ意欲のある高校生を広く受け入れるため,内容や構成への審査配点が高くなっている。

今回の大会ではスピーチを行ううえで次の3つの指針が与えられ,より家族について考える方向性が示された。

1. 家族の大切さについて──社会の基本単位である家族を維持し強めるために,今わたしができること。

2. 家族のきずなを強めることについて──わたしはこのようにして家族のきずなを強めることができると考える。

3. 家族の関係は墓を越えて永く続いていくことについて── 先祖や祖父母を敬い,両親に従うことの大切さ,家族関係が代々受け継がれてきたことを知り,自分も家族の伝統や価値の継承者となる。

出場者は家族との実体験だけではなく,自分が描いている将来の家族像を含めて高校生の視点で希望,夢,提言を語った。中には感極まって涙ながらに語る生徒もいたが,審査員は一時的な感情に流されることなく審査基準を重視し,厳正な審査が行われた。

今回の大会でもインスティテュート学生評議会の支援を受け,学生たちは出場生徒一人一人のお世話係や審査集計,受付,会場案内,通訳などを担当した。独身成人の会員が大会の雰囲気を和んだものとするために活躍したことは,非常に好感の持てるものだった。

●優勝スピーチ

●優勝スピーチ

優勝は九州地区の代表として出場した長崎女子高等学校3年の木山晴佳さん。「家族のきずなを強くすること」をテーマに,それぞれが楽器を演奏しているオーケストラに家族をたとえてスピーチを行った。

「オーケストラ団員の一人でもテンポが狂うと音楽が崩壊し,不協和音を奏でるように家族も調和しなくなるのです。オーケストラでは,美しい音楽を生みだすために,様々な楽器のそれぞれの音色が調和します。それらの音色が指揮者によって一つになったとき,壮大な交響曲が誕生するのです。わたしはオーケストラ部に所属しており,フルートを演奏しています。わたしの両親もまた,フルートを演奏します。だから,わたしは小さいころから音楽に囲まれて育ちました。家族が一緒になって音楽を奏でるときの気持ちを想像できますか?それぞれが個々に動きながらも,ともにすばらしい音楽,すばらしい関係を築いているのです。わたしたちの音楽ときずなは離れないのです。

2年前にわたしの母の視力が急激に落ちました。わたしたちの世話どころか,自分の面倒さえ見れなくなってしまったのです。はっきりとした原因は分りませんでしたが,お医者さんはおそらく過労が原因だと言って,母に入院を勧めました。しかし母は入院を断り,わたしたちに『わたしにはあなたたちが必要なの。家族と一緒に居ることがいちばんの薬なの』と言いました。しかし,すぐに彼女の病気の影響が家族に響き始めました。わたしたちは,オーケストラが指揮者のタイミングを頼るように,すべてのことを母親に頼っていました。だから,指揮者を失ったわたしたち家族は,まったく同調しなくなったのです。家族全員が彼女の負担を減らそうとしましたが,だんだんと苛立ち始めてしまいました。わたしたちは,美しい音楽どころか簡単な音楽さえも奏でることができなくなってしまいました。わたしたちの公演は終わってしまったようでした。悲しいことに,そのときはだれ一人としてこの変化に気づけないでいました。

あるとき,家でフルートの練習をしていました。母の大好きな『ララルー』を演奏していると,知らず知らずのうちに涙があふれ出ていました。間違えたわけでもないのに悲しい旋律が家中に響きわたりました。わたしは母をまったく理解せずに,一緒になって演奏していた日々を忘れていたのです。すると突然,部屋の外で母親がフルートを演奏しているのが聞こえました。演奏自体は全然上手くなかったけれど,わたしはもう一度一緒に演奏できた喜びを忘れられません。

楽器のように家族一人一人も,それぞれの個性があるのです。個々でも美しい音楽が奏でられますが,一緒になったときは壮大なハーモニーとなるのです。わたしは,母の病気を通して,このことに気づきました。幸いにも,母は今回復し,わたしの家族には再びハーモニーが戻ってきました。もう一度,わたしの家族はすてきなオーケストラとなりました。」

優勝した木山さんには,BYUハワイ校サマースクールへの招待をはじめとする副賞が贈られた。準優勝は,東海地区代表の南山高等学校女子部2年,立松恵さん。第3位は沖縄地区代表の沖縄尚学高校1年,平良佐樹さんが,それぞれ受賞した。九州地区予選大会の代表となった木山さんが優勝したので,来年度の九州地区予選大会では2名の代表者が全国大会へと選出される。入賞者のスピーチ原稿と映像,及び来年度の予選大会の日程はホームぺージ(http://www.byuh.jp/)に掲載される。◆