リアホナ2007年1月号 モルモン・タバナクル合唱団をドキュメンタリー作品で紹介

モルモン・タバナクル合唱団をドキュメンタリー作品で紹介

──『ジョセフ・スミス200年目のクリスマス~ソルトレーク世界最大の合唱団~』と題して

2005年12月23日,ユタ州ソルトレーク・シティーはジョセフ・スミス生誕200年の記念行事に沸いていた。カンファレンスセンターと,ジョセフ・スミス生誕の地であるバーモント州シャロンを衛星回線で結び,さらにその模様を全世界6,000か所以上の衛星放送受信施設(ステークセンターなど)へ中継して,ジョセフ・スミス記念放送が行われたのである。この放送では,モルモン・タバナクル合唱団とテンプルスクウェア管弦楽団が預言者ジョセフの生涯を偲んで多くの賛美歌を奏でた。教会員の中には,シャロンから語りかけるヒンクレー大管長の姿をご記憶の方も多いだろう。

このとき,カンファレンスセンターにはNHKエンタープライズの撮影取材班が訪れていた。NHKエンタープライズはNHK出資の制作会社で,NHKやその他の企業などから委託を受けて映像作品を制作している。彼らはタバナクル合唱団を紹介する映像作品を企画し,現地法人であるNHKエンタープライズアメリカのクルーとともに取材を進めていたのである。

この作品のプロデューサーを務めるNHKエンタープライズの後藤克彦氏はこう語る。「NHKでもアメリカを紹介する番組というのはいっぱいあるんですけど,どうしても東の端と西の端に偏ってくるんです。今回のことで,NHKアーカイブス(過去の番組保存庫)をいろいろ調べても,中部・中西部っていうのはすごく(情報が)薄いんですよね。そういう意味からも非常に興味がありました。

現地法人のクルーも,オリンピックでお世話になった人もいましたけど,ほとんどの人がソルトレークは初めてでした。普段は大リーグなどスポーツ中継とか,あとは政治などでもニューヨークやワシントンでの取材が多いので,彼らとしても非常に興味深かったと。ソルトレークという町自体,日本の方のほとんどは,オリンピックをやったところ,というくらいの記憶しかないと思うんですけど,伊藤博文が滞在したとか,けっこういろいろおもしろい日本との接点もあるし,そういうこと(を紹介すること)のきっかけになるんじゃないかということで,まずはDVDを制作してみた次第です。このプログラムは当面,放送されることはないんですけれど,今回,ここに入り切れないものもいろいろ撮らせていただいたので,先々また活用できるんじゃないかと思います。」

このドキュメンタリーは,タバナクル合唱団に付属するテンプルスクウェア・ベルクワイヤーのハンドベル演奏風景から始まる。彼らはプロではなく全員アマチュアで,それぞれが自分の仕事を持っていること,それでいて,10倍以上の応募者から選抜されたその実力は折り紙付きであることが紹介される。それはそのままテンプルスクウェア管弦楽団と,世界最大・360人の団員で構成されるタバナクル合唱団にも当てはまる。これまで数多くのアメリカ大統領就任式で歌い,レーガン大統領をして「タバナクル合唱団こそわれらアメリカの合唱団だ」と言わしめた歌声は,全米のみならず世界レベルで高く評価されている。にもかかわらず,だれも報酬を受け取らず全員がボランティアなのはなぜか。──タバナクル合唱団とテンプルスクウェア管弦楽団の指揮者・音楽監督であるクレーグ・ジェソップ兄弟はインタビューにこたえてこう語る。「わたしたちの教会では(ビショップ,ステーク会長など)役職にある人でもお金を受けません。だれが奉仕しても同じです。タバナクル合唱団はその奉仕の延長のようなものです。ここで歌うことは教会での助け合い(召し)と同じものと考えているのです。合唱団は団員の信仰と奉仕の気持ちで運営されているのです。」

彼らのボランティア精神のルーツを追いかけて,カメラは合唱団の歴史と,その原点にいるジョセフ・スミスの生涯へと焦点を当てていく。そもそも今日のユタ州の繁栄は,1805年,バーモント州に生まれた一人の少年に端を発しているのである……。

これらは宗教的に中立の立場から描かれ,ジョセフ・スミスの最初の示現についてもあからさまには触れられない。しかし史実は正確に描かれている。当時,非常に先進的な都市であったノーブー市の建設から,迫害とジョセフ・スミスの殉教,大平原を越えて西部へ向かうつらい旅のさなかにも歌とダンスで楽しむことを忘れなかった開拓者の精神を受け継ぎ,タバナクル合唱団が生まれたことなどがつづられる。教会員のみならず,会員でない親族・友人に紹介しても抵抗なく楽しめる内容となっている。

この映像作品はDVDに収められ,記念放送から1年目の2006年12月23日,ジョセフ・スミスの誕生日にリリースされた。教会外の出版社からジョセフ・スミスやタバナクル合唱団を扱った映像作品が出版されるのは,日本ではこれが初めてとなる。◆