──助産師 金城澄江姉妹 那覇ステーク那覇ワード
金城澄江姉妹が大学病院で看護師として働き始めたばかりのころだった。親に黙って中絶手術を受けた19歳の女性の容態が悪くなり,最終的に手遅れの状態で大学病院へと搬送されて来た。父子家庭だったので父親が病院へ呼び出され,付き合っていた男性と対面した。何が起こっているのか理解できない父親の前で19歳の娘は息を引き取った。
「病気ではないのに若い娘さんは亡くなっていきました。母親がなく父親に育てられた娘さん。取り残された父親。同席する付き合っている男性。その姿を見たときに,自分に何ができるだろうかと思いました。」
今日,子どもたちが学校でどのような性教育を受けているのか知らない親も多い。「避妊法」をきわめて具体的に教え,それが試験に出るという驚くべき現状。エイズなど,病気を避けるという観点からしか倫理を語れない教育現場。「それらのプログラムを見ると,純潔を守るということは前提ではなく,性的な関係を結ぶということが前提となっています。」医療の現場では倫理を説かないようにと指導される。数々の研修会で様々なことが語られ,子供たちもいろいろな教えを学校で受けて迷っている。「仕事の現場で純潔を指導できる人はいません。宗教観が背景になければ説けません。学校では宗教を背景とした人を呼べませんから,できないんです。結局,結果を引き受けるのは女性なので,女性を守ることから始まります。だから避妊の教育になってしまうんです。」
金城姉妹は性教育について学校から招待を受けて話すこともある。授業参観日に両親を交えて教えたこともある。「幸せのルールというものがあるんです。男女の出会いからデートの様々な段階を経て,結婚,出産などと書かれたカードを子どもたちに順番に並べさせます。その順番が違うとほんとうの幸せと少し違ってきます。両親がそうしたルールに従ってきていなくても,子どもたちにはそのルールに従ってみてくださいと教えます。順番に対していろんな意見が出ます。社会の現状は違うと言う子供もいます。そんなときわたしは,自分が立ち会った出産の話や,子どもの誕生に感動した夫婦の話をすることもあります。おばさんの言うことを試してほしいと言いながら話します。」
末日聖徒の親だからできること
「自分に何ができるのか」と問うた金城姉妹が高校生の一人娘に語った最初の言葉は「あなたにお母さんが試してみたいことがある」だった。金城家で,純潔について両親が揃って子供に語りかける。そのとき試みたことはただ一つ,徹底して率直・正直かつ具体的に話すことだった。産院で使われている医療器具を見せつつ,自分の見てきた医療現場で
何が行われているか,生物学的な神秘,出産の感動。また父親は,男性として誘惑に直面したときどんな気持ちか,どう対処するのかといったことまで腹を割って話した。
「娘は『お母さん,こんなことまで話してくれておもしろい』と言います。子供は必ず反応してくれます。そして最後は両親の倫理観に耳を傾けてくれます。子供と心を通わせるいちばん良い材料は純潔について語り合うことだと思いました。信仰や信念を真剣に話し合えるいちばんすばらしい材料です。教会の教えが子供たちにとって守りになっていると語れる材料になります。」
「あなたが生まれたときほんとうにうれしかった,と何度も娘に話しました。娘は,『お父さんとお母さんが結婚してくれたから自分がいるんだね。お母さんに会えてよかった。大切な話をしてくれてありがとう』と言います。結局,子供が感じたことは,わたしたちの子供でよかったということでした。」性教育というと,難しいものと思い込みがちである。「しかし,実際にはとても単純なその一言がすべてだったように思います。このような率直な形でコミュニケーションしていれば,きっと子供は心を開いてくれるでしょう。多くの子供たちは,『こんなことを聞いてもいいのだろうか』と迷っています。しかし,子供が小さいころからきちんと教えて,一つ一つ答えていこうと親が決めさえすれば,そんなに難しいことではないと思います。」
今では娘が学校の友達を「教えてあげて」と連れて来ることもあるという。しかし,「純潔の律法について,子供たちは医学的な答えを求めているわけではありません。」金城姉妹は,医師や看護師でなければ教えられないということはなく,「教会員は倫理観がしっかりしているので,教えられるはず」と話す。「純潔の律法に従うことは得なことだと子供が感じてくれればすばらしいと思います。」母親や父親が一緒に戦ってくれている,という気持ちを教会の子供たちが感じてくれるように願いながら,金城家の試みはまだまだ続いている。◆